2011 Fiscal Year Annual Research Report
安定同位体標識法による生分解性プラスチック分解菌の環境動態解析
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22350067
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中島 敏明 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (80241777)
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Keywords | 生分解性プラスチック / 安定同位体標識法 / モノマーリサイクル |
Research Abstract |
これまでに、培養法による生分解性プラスチックの分解菌の単離や分解に関与する微生物群集構造の知見が得られてきた。しかし、培養法は自然界に生息する微生物のうち99%に上るといわれる培養困難な状態の微生物を含めないため、自然環境中で実際に作用し、生分解性プラスチック分解に寄与している微生物は未解明であると言える。また、メタゲノム法は環境中の全DNAを対象に解析を行うため、分解に関与する微生物のみに焦点を当てた解析を行うことは困難であった。そこで本研究では^13Cでラベルをしたプラスチックを用いることにより、分解菌のDNAのみを選択的に抽出、解析し、環境中での分解菌の動態を解析することを目的とした。 昨年度、^13C-PHBフィルムを土壌に埋設し、PHB分解菌に焦点を当てた解析を行った結果、^13C-PHB由来DNAはほぼ^13C-DNAで構成されていることが明らかとなった。このことより、PHBフィルム表面に存在する微生物のほとんどがPHBを資化しているととが示された。昨年度は1種類の土壌のみで検討を行ったが、今年度に日本の代表的な土壌(黒ボク土壌、灰色低地土壌、褐色森林土壌)を用いて、同様の傾向が見られるかについて検討した。^12C-PHBを用いて予備検討を行った結果、PHB表層の微生物叢はほぼ同一であり、土壌種に変わらず特定の微生物が分解に関与することが明らかになった。そこで、分画した^13C-DNAをクローン解析に供し、微生物種の同定を行った。また、^13C-DNAを用いてメタゲノムスクリーニングを行い、有用遺伝子の探索を行った。その結果、PHB表面の微生物叢はほとんどが既知のPHB分解菌とPHB生産菌で構成されていることが明らかとなった。一方で、これまでにPHB分解菌として報告のない菌が検出されたことから、新規PHB分解菌の存在が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PHB表面の微生物叢について、予想とは異なり、ほぼすべての微生物が分解に関与していた。これまで行った他の生分解性プラスチックではこのような現象が認められなかった。これはPHBが他の生分解性プラスチックとは異なり微生物が生産する天然物質であることに起因すると考えられる。また土壌の種類に関わらず分解菌の叢は大きく汎化しないという新しい知見が得られた。この点は当初の計画以上に進展している。しかし、メタゲノムスクリーニングによる遺伝子取得にいたっておらず、この点はやや遅れているため、全体としてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
メタゲノムスクリーニングによる遺伝子取得にいたっていない。このため、スクリーニングを継続するとともに、培養法による分解菌取得も同時に行いたい。また、PHA以外のプラスチックについても検討を行いたい。
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