2011 Fiscal Year Annual Research Report
ハロゲン系有機化合物の高感度分析と曝露評価、生成メカニズムに関する研究
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22350070
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
雨谷 敬史 静岡県立大学, 環境科学研究所, 准教授 (10244534)
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Keywords | ハロゲン化有機化合物 / 多環芳香族炭化水素 / GC/MS / 加熱脱着法 / 燃焼生成物 / 負化学イオン化法 / リスク評価 / 生成メカニズム |
Research Abstract |
本研究の目的は、ハロゲン系有機化合物を高感度に分析しうる手法を開発すること、対象化合物のリスク評価の一環として個人曝露評価法を開発すること、対象化合物の生成メカニズムを追求することである。これまでの研究で、分析対象物質は、負化学イオン化ガスクロマトグラフ/質量検出器(NCI-GC/MS)で高感度かつ選択的に測定しうることを明らかにしてきた。そこで、本年度は、より高感度な手法の開発を目指し、加熱脱着法を組み合わせた分析法を開発することとした。その一環としてまず、加熱脱着条件の検討を行った。条件として加熱脱着時間の最適化、加熱脱着流量の最適化、出口スプリット比の最適化を検討したところ、それぞれ30分、毎分10mL、スプリット比100%(スプリットレス)が最適と考えられた。このとき、加熱脱着法により得られたピーク面積を、溶液を注入して分析した時のピーク面積と比べると、加熱脱着法では、脱着した化合物の33%がカラムに入ったと計算された。すなわち、溶液注入法の3倍以上の試料を注入すれば加熱脱着法の方が高感度に分析しうると考えられた。(実際には100倍程度の試料を注入可能である。)次に、ポリ塩化ビニル(PVC)と、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)を、昇温型電気炉内で燃焼させ、そこから生成するハロゲン化PAHの種類と量を解析することにより、生成メカニズムの検討を行った。焼却温度は、500℃と800℃とした。500℃でPVDCを燃焼させると、塩素化ナフタレン、塩素化フェナントレンなど多くのハロゲン化PAHが、多量に生成した。例えば、PVCの燃焼時と比べて、1,3,5,7-4塩化ナフタレンは約1000倍多く生成した。800℃にすると、PVCからのナフタレンの生成量は大きく減少し、PVDCからの高塩素化ナフタレンの生成量が増加した。今後さらに炉内での滞留時間を変化させる実験も行い、メカニズムの検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハロゲン系有機化合物を、加熱脱着法と負化学イオン化ガスクロマトグラフ質量分析器を用いて、より高感度に分析する手法の開発には概ね成功しつつあること。加熱脱着法の長所短所、適用範囲を把握することができたこと。ハロゲン化多環芳香族炭化水素の生成メカニズム検討の一環として、ポリ塩化ビニルとポリ塩化ビニリデンの燃焼生成物の解析を行ったところ、大きな違いを認めたこと。
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Strategy for Future Research Activity |
ハロゲン系有機化合物を加熱脱着法で分析する場合に、妨害物質の影響を受けることが判ったことから、加熱脱着前にクリーンアップを行うことや、加熱脱着時にクリーンア・ソプを行うことの有効性を検討したい。また、より多くの化合物の分析法を確立し、個人曝露評価につなげたいと考えている。また、ポリ塩化ビニルなど塩素系プラスチックの燃焼からのハロゲン化PAHの生成メカニズムの検討では、500℃という低温で塩素化ナフタレン等が生成する理由等について検討したい。
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Research Products
(14 results)