2011 Fiscal Year Annual Research Report
化学的アプローチによる細胞中のヒトテロメアDNAとRNA構造の解明およびその応用
Project/Area Number |
22350071
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
徐 岩 宮崎大学, 医学部, 准教授 (40506763)
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Keywords | ヒトテロメアDNA / ヒトテロメアRNA / 四重鎖構造 / 化学的アプローチ / 抗がん分子 |
Research Abstract |
本研究では、化学的アプローチを用いて、細胞内におけるヒトテロメアDNAとヒトテロメアRNAの構造・機能を明らかにすることによって、染色体構造の安定化、老化の調節、がん化などにおけるテロメアの分子作用機構を解明し、得られた基礎情報に基づいてテロメアをダーゲットとするがん標的治療の新手法の開発を目的としている。本年度は、化学的手法を用いてヒトテロメアRNA構造の解析およびテロメアDNA/RNAの分子構造・機能を解明することを効率的に進めた。その結果、ヒトテロメアRNAがmRNAと分子間RNA4重鎖構造を形成することにより遺伝子発現を調節することを発見した。(J.Am.Chem.Soc.133,19153,2011.)。さらにテロメアDNA4重鎖構造などによる操作するDNAナノマシンーンで生体分子などを検出することに成功した化学蛍光プローブを用いて、生細胞内のヒトテロメアRNAの構造を可視化することに成功した(Nature Communcations 2011 2:449 doi:10,1038/ncomms 1452)。また、これまでのテロメアDNAとRNAの研究結果を総説としてまとめた(Chem.Soc.Rev.2011,40,2719;Methods 2012,in press;Curr.Pharm.Des.2012,18,2096)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、化学的アプローチを用いて、細胞内におけるヒトテロメアDNAとヒトテロメアRNAの構造・機能を明らかにすることによって、染色体構造の安定化、老化の調節、がん化などにおけるテロメアの分子作用機構を解明し、得られた基礎情報に基づいてテロメアをダーゲットとするがん標的治療の新手法の開発を目的としている。 (1)ヒトテロメアDNAとRNAの構造・機能の解明については、NMR構造解析により、ヒトテロメアRNAがウラシル4分子体を形成する四重鎖構造を発見した(J. Am. Chem. Soc. 132, 7231, 2010)。この構造は新たな抗ガン剤開発のための治療ターゲットとなる可能性が期待されている。さらに化学蛍光プローブを用いて、生細胞内のヒトテロメアRNAの構造を可視化することに成功した(Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 107, 14579, 2010)。またヒトテロメアRNAがmRNAと分子間RNA4重鎖構造を形成することにより遺伝子発現を調節することを発見した(J. Am. hem. Soc. 133, 19153, 2011.)。さらにテロメアDNA4重鎖構造などによる操作するDNAナノマシンーンで生体分子などを検出することに成功した化学蛍光プローブを用いて、生細胞内のヒトテロメアRNAの構造を可視化することに成功した(Nature Communcations 2011 2:449 doi:10,1038/ncomms 1452) (2)がん標的治療の新手法の開発については、光応答性DNAを用いて、光架橋により有効なテロメラーゼ阻害することによるガン細胞のみを選択的に死滅させる方法を開発した(J. Am. Chem. Soc. 132, 631, 2010)。また環状型ヘリセン小分子によるテロメラーゼ活性のエナンチオ選択的な阻害することに成功した(J. Am. Chem. Soc. 132, 7231, 2010.) (3)これまでのテロメアDNAとRNAの研究結果を総説としてまとめた(Chem.Soc.Rev.2011,40,2719;Methods 2012,in press;Curr.Pharm.Des.2012,18,2096)。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)これまでの研究をさらに発展させ、新たに発見されたテロメアRNAがどのように染色体の末端保護において重要な役割を担っているかを明らかにすることを目的としている。具体的には、ヒトテロメアDNA、ヒトテロメアRNA、ハイブリッドテロメアDNA/RNAをヒト線維芽細胞に投与し、老化細胞に特有な形態変化、または細胞老化マーカーの誘導(例えば、細胞老化特異的β-ガラクトシターゼ活性)により細胞老化を確認する。これは、人為的にDNA損傷を感知する分子装置を模倣することで、テロメアDNAとRNAにより形成されたハイブリッド四重鎖構造は染色体末端を「隠す」ことができるかどうかを追究するものである。さらに、細胞老化に関係する遺伝子(例として、p53)の発現について調べることにより、テロメアDNAとRNA高次構造が形成されたことによって生じると考えられる新しい制御機構を解明する。 (2)四重鎖構造を形成することを利用して副作用の少ないガン治療手法開発の新しい手法を開発する。機能性分子設計に基づいてテロメアやガン遺伝子DNAに強力かつ選択的に結合する分子を合成し、ここに反応性を付与して、効率的にテロメラーゼなどを阻害してガン細胞を殺滅する。
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