2011 Fiscal Year Annual Research Report
電場応答性柱状液晶相の分極安定化と分子部品構築場の実現
Project/Area Number |
22350079
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
岸川 圭希 千葉大学, 大学院・工学研究科, 教授 (40241939)
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Keywords | 液晶 / 強誘電性 / 電場応答性 / 分極反転 / 分子部品 |
Research Abstract |
このプロジェクトでは、当研究室で見出された電場応答柱状液晶相の強誘電性を実現することを目的としている。さらに、強誘電性が実現することにより、分子を自己集合させるフィルムを完成させることも目標としている。 23年度は、電圧応答するが、電圧除去後は、極性構造を示さなくなることが知られている尿素誘導体(N,N'-Bis[3,4,5-tri(H(CH2)nO)3C6H2)NH]2C=0)のアルキル末端に、極性基を導入することにより、カラム問の電子反発を緩和することを試みた。具体的には、N,N'-BiS[3,4,5-tri(X(CH_2)nO)_3C_6H_2)NH]_2C=0のXの部分に、-COOCH_3,-OH,-Cl,-Br,-CONH-C_4H_9,-O-C_6H_5,-O-C_6H_4-F,-O-C_6H_4-CH_3,-O-C_6H_4-OCH_3,-O-C_6H_4-CN,-O-C_6H_4-CN, -OC_6H_4-C_6H_4-CNを導入し、それぞれの化合物の液晶性や電圧応答性を調査した。末端に置換基を導入すると、どの場合にも、柱状液晶相が発現するが、カラム間での相互作用は非常に強くなることが、偏光顕微鏡観察におけるテクスチャの形状変化やX線回折ピークの尖鋭化から確認された。しかし、電圧印加実験においては、カラム間の相互作用が強く働き、電場応答しなくなるものや、末端置換基のみが電圧に応答してしまうものがほとんどであった。このなかで、末端がハロゲン基(Br,Cl)の化合物は、特殊な挙動を見せた。電圧印加実験の初期段階では、末端置換基Xのみが電場応答しているが、末端のC-X結合が熱分解を起こし、C・と・Xを生じ、X・はX_2となり、系外に除去され、C・はカラム間でカップリング反応を起こしているものと考えられる。この熱分解が進行するとともに、閾値を有する強誘電性のピークが現れた。閾値は10~15V程度であるが、閾値以上の電圧をかけないと極性反転を起こさないという典型的な強誘電的な性質を示した。この新しい重合方法の発見により、カラム間のアルキル鎖末端のカップリングが可能となり、数十ミリ秒程度の応答速度の速い強誘電性柱状相を実現することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アルキル鎖末端がハロゲンである尿素誘導体の電圧印加実験では、これまでになかった柱状カラム最末端での重合反応を見出し、強誘電性実現への大きなブレークスルーになった。この発見は、このプロジェクトにおいては、予想していなかったものであるが、電圧で制御する分子部品構築場を一気に実現することに繋がるのもの期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の平成24年度においては、末端Brの尿素誘導体化合物をフィルム状にし、電圧印加しながら重合反応を行う。その後、フィルム上に分極状態の異なる領域を作り分け、分子分極を有するとともに蛍光発光する分子を相互作用させ、紫外線照射により電圧印加で形成された潜像を現像化する。この状況を確認した後、新しいフィルム上に電圧印加で潜像を形成し、重合性モノマーを作用させ、光重合をおこなう。本研究においては、フィルムの厚みと潜像形成の関連が不明な点であり、この件については、試行錯誤が必要と思われる。
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