2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22350081
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
清水 正毅 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10272709)
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Keywords | 蛍光 / 固体発光 / パイ共役系 / 発光材料 / 量子収率 / キナクリドン |
Research Abstract |
分子凝集した固体状態において高効率発光する有機発光材料の創製は、有機ELに代表される有機固体発光デバイスの開発につながる実用的課題であるのみならず、有機固体が本質的に内包する濃度消光の克服という学術的難題でもある。この挑戦的課題に対して、今年度はジメトキシビス(3,3,3-トリフルオロプロペン-1-イル)ベンゼンの設計、合成、光物性評価ならびに分子軌道計算による電子構造の解析を行った。その結果、1,4-ジメトキシ-2,5-ビス(トリフルオロプロペニル)ベンゼンが溶液状態、固体状態ともに紫色の可視光発光を示すことを明らかにした。薄膜状態での蛍光量子収率は0.37、ポリ(メチルメタクリレート)フィルムに分散した状態のそれは0.49を記録した。含まれる芳香環がベンゼン環一つからなる発光材料で可視光発光を示す有機固体は他に1例しかなく、この結果は注目に値する。理論計算により、この短い共役系からの可視光発光は、メトキシ基からトリフルオロプロペニル基への分子内電荷移動により生じる一重項励起状態からの発光と帰属できる。続いて、2,5-ビス(ジアリールアミノ)テレフタル酸ジエステルが固体状態で効率良く可視光発光することを明らかにした。窒素上アリール基の置換基を変えることにより、発光色を緑色から黄色に調節できることがわかった。単結晶のX線構造解析により、ジアリールアミノ基二つとアルコキシカルボニル基二つは、それぞれ中央のベンゼン環平面に対して捻れて配置していることがわかった。この捻れにより分子間距離が離れたパッキングをしており、このパッキング様式がデクスター機構によるエネルギー失活を防ぐのに効果的であると考えている。また、蛍光スペクトルのソルバトクロミズムおよび理論計算による電子構造の解析により、発光の由来はアミノ基からアルコキシカルボニル基への分子内電荷移動によるものと帰属できることがわかった。
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