2011 Fiscal Year Annual Research Report
シリカ細孔体の特異な固体酸触媒能の発現機序解明と有機合成化学への展開
Project/Area Number |
22350089
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
岩本 正和 東京工業大学, フロンティア研究機構, 教授 (10108342)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石谷 暖郎 東京工業大学, 資源化学研究所, 講師 (50302617)
田中 大士 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (00528002)
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Keywords | シリカメゾ多孔体 / ナノ細孔 / ニッケルイオン / 酸触媒 / 固体NMR |
Research Abstract |
本年度は下記の三課題について集中的に検討し、それぞれ所期の目的を達成することができた。 1.特異な固体酸触媒能を利用した新しい有機合成反応系の開拓: シリカメゾ多孔体調製時に用いるシリカ原料が実質的にアルミニウムを含まない場合にのみ、従来にない固体酸触媒特性が発現することを認めた。この触媒作用を利用すると、シリカ-アルミナ系では、酸性が強すぎるため、ほとんど進行しないEne反応が効率的に進行すること等を見いだした。また、本触媒特性が顕著な前処理温度依存性を有していることを認め、表面水酸基濃度と相関していることを究明した。 2.酸触媒能の発現機構の解明: 上記の触媒系についてMAS-NMRを用いてQ2、Q3、Q4種の識別潰掟を行い、表面水酸基量、存在状態と触媒活性の関連を究明した。これらの水酸基は、従来型のアンモニア吸着、ピリジン吸着では酸点として認識できないことも明らかとなった。さらに、同法を用いてシリカ細孔内表面および外表面に存在する水酸基を識別し、定性定量しようと試みている。 3.ナノ多孔体に担持された金属イオンのキャラクタリゼーション: オレフィンの二量化、異性化、メタセシス反応に活性なNi-MCM-41中のニッケルイオンの存在状態を種々の分光学的手法(XRD、IR、EXAFS等)によって詳細に検討し、ニッケル銅イオン周りの配位構造を決定することに成功した。シリカ壁に存在する5員環サイト、6員環サイト上にそれぞれ3配位、4配位ニッケルイオンが存在していることを結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた固体酸性の発現機構のみならず、ニッケルイオン担持体の表面活性構造の解明に成功し、シリカ細孔体の特異性解明に一歩踏み込むことができた。これまでは、シリカ細孔体は単に大表面積担体、大細孔系担体としてのみの認識が一般的であったが、本研究により、細孔内面にはこれまでに知られていない新しい酸触媒活性点が発現していることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究成果を踏まえ、以下の点について集中的な検討を行う。 1.特異な固体酸触媒能を利用した新しい有機合成反応系の開拓:シリカ系固体酸触媒が有効に機能する合成反応系を識別する。また、非常に弱い酸が有効に機能することが明らかになったので、位置選択性、不斉酸反応等への拡大を図る。 2.酸触媒能の発現機構の解明:IR等を用いて水酸基の種類とその存在量を調べる。その際、アセトニトリル等の種々のプローブを用いる方法を併用する。また、高温排気処理や再水和との関連についても解明する。 3.ナノ多孔体に担持された金属イオンのキャラクタリゼーション:金属イオンの担持状態の変化をUV-Vis、IRスペクトルによって測定する。また、反応条件、基質の吸着による金属イオン状態の変化も併せて測定する。
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