2012 Fiscal Year Annual Research Report
水の相転移挙動から観た高分子材料の生体適合性の発現機構
Project/Area Number |
22350101
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
北野 博巳 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (40115829)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
源明 誠 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 助教 (70334711)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 低温結晶化水 / 生体適合性 / 吸着タンパク質 / 水の構造 / 多重反射赤外分光法 |
Research Abstract |
本年度は,高い生体適合性を有する合成高分子として知られているポリエチレングリコール(PEG)水溶液の再結晶化挙動を、温度可変赤外分光法により調査した。近年、高い抗血栓性を有することが見出されたPoly(2-methoxyethyl acrylate) (PMEA)中にも同様に再結晶化水が見出され、PEGとPMEAに共通のある特殊な水の存在が、生体適合性の発現に関与する、と提案されている。我々はこれまでに、PMEA中の再結晶化水は、単分子様の水が昇温過程で拡散を経て結晶化(氷形成)することを報告した。本研究では、含水率37.5 wt%のPEG水溶液の再結晶化について精査した。 PEG水溶液中の水の再結晶化は、PMEAと同様に、降温速度に強く依存しており、低い降温速度で処理した試料では、降温過程で全ての水が結晶化し、昇温過程での結晶化は全く認められなかった。一方、高い降温速度では、降温過程での結晶化は観測されず、昇温過程での結晶化、すなわち再結晶化のみが観測された。PMEAの場合、240 K付近での一段階の再結晶化であったのに対し、PEG水溶液では、198 Kおよび210 Kにおける二段階での再結晶化が観測された。 水の再結晶化に伴うPEG鎖の形態変化について、CH伸縮振動領域のIRスペクトルをもとに評価したところ、198 Kで再結晶化した水は、PEGの結晶構造単位を有する高分子鎖に水和した水分子であり、210 Kで再結晶化した水は、PEGのランダム鎖に水和した水分子であることが判明した。これらの結果は、再結晶化水が、ある特定の水素結合構造を持たないこと示すとともに、再結晶化水が材料の生体適合性の発現に関与する、との提案を再考する必要があることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請研究の初年度および本年度を通じて,当初目標としていた吸着タンパク質の構造評価手法,および,極低含水率から水溶液系までの温度可変赤外分光測定を確立している.今後,種々の系について,細胞接着,タンパク質吸着,および水の動態について調査することで,本研究目的を達成可能であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
評価手法については,概ね確立していることから,研究計画にしたがって,種々の系について,さらなる評価を行う予定である.
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Structure of water in the vicinity of a zwitterionic polymer brush as examined by sum frequency generation method.2012
Author(s)
Kondo, T.; Nomura, K.; Murou, M.; Gemmei-Ide, M.; Kitano, H.; Ohno, K.; Noguchi, H.; Uosaki, K.; Saruwatari, Y.
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Journal Title
Colloids Surfaces B: Biointerfaces,
Volume: 100
Pages: 126-132
DOI
Peer Reviewed
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