2011 Fiscal Year Annual Research Report
分子性半導体におけるスピン輸送特性・緩和機構の精密測定
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22360008
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
白石 誠司 大阪大学, 基礎工学研究所, 教授 (30397682)
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Keywords | スピントロニクス / 分子性半導体 / スピン緩和 / ショットキー障壁 |
Research Abstract |
分子性半導体単結晶への電気的スピン注入にむけた界面制御に取り組み、界面ドーピングの手法によって従来強磁性体と分子性単結晶の界面に存在していた0.56eVにも及ぶ大きなショットキー障壁を解消することに成功した。ドーパントにはTCNQやF4TCNQさらにMoO3を利用し、分子性半導体単結晶にはルブレンを用いた。分子性ドーパントは電子受容体であり、TCNQに比べてF4TCNQはフッ素を含有するぶん、電子受容性に優れる。実験結果はこれを再現し、TCNQドープでは0.26eVほどショットキー障壁が残ったが、F4TCNQでは擬似オーミックなコンタクトを実現できた。さらにMoO3では半導体チャネルの伝導度を1桁以上向上させながら擬似オーミックなコンタクトを形成することに成功した。上記の実験はいつれも室温近傍での実験であり、研究代表者が指向する室温スピントロニクスの面でも革新的な成果であるだけでなく、電気的なスピン注入にむけた大きなマイルストーンである。 一方、電気的手法に頼らずに信頼性あるスピン輸送・緩和機構を精密測定する技術の立ち上げをおこなっており、既にゼロギャップ半導体である単層グラフェンでは成功した。基本的には動力学的手法を用いた室温スピン輸送であり、電気的手法に比べて簡便であること、信頼性が高いことがこの手法の大きな利点である。また、この手法は十分な汎用性を有するためにバンドギャップを有する分子性半導体においても成功裏に実験を遂行できる見込みが高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分子性半導体への電気的スピン注入そのものの信頼性の検証に時間を要している。電気的手法では様々なspuriousな効果を排除することが非常に難しいため、これを回避する全く新奇な手法を開発中であり、最終年度には成果を発信できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように電気的手法だけではスピン輸送・スピン緩和機構の検討に不十分であることが判然としたので、新たに確立した動力学的手法を十全に生かして最終年度の研究を遂行する。
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Research Products
(3 results)