2011 Fiscal Year Annual Research Report
エピタキシャル成長その場マイクロX線回折による単一ナノ構造解析と均一性制御
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22360010
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
高橋 正光 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (00354986)
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Keywords | 放射光X線回折 / 量子ドット / 量子細線 / 分子線エピタキシー |
Research Abstract |
自己形成量子ドット・量子細線など半導体ナノ構造のエピタキシャル成長において、構造の均一化は重要な課題である。本研究は、同じ成長条件下にありながら、個々のナノ構造間にゆらぎが生じる原因を解明するため、単一の量子ドット・単一の量子細線のエピタキシャル成長条件下におけるその場X線回折をおこなうことを最終的な目的としている。 本年度は第一に、昨年度製作したX線マイクロビーム装置の性能評価をおこなった。本装置は、分子線エピタキシャル成長装置内の試料位置に集光点が存在することが特徴である。直径0.2-0.5mmの金線を用いた測定治具を設計・製作し、超高真空内における集光サイズを評価した。その結果、ほぼ設計どおりの1.1μm(垂直方向)×1.4μm(水平方向)のX線ビームが得られていることがわかった。また、実験室や真空装置に由来する振動は、集光性能にほとんど影響していないことも確かめられた。 第二に、金を触媒とした気相・液相・固相成長法(VLS成長法)によるガリウムヒ素量子細線の成長について、世界で初めてとなるその場X線測定をおこなった。量子細線に特有な現象として知られている閃亜鉛鉱構造とウルツ鉱構造の間の結晶構造変化の様子を精密に追跡することに成功した。 第三に、自己触媒成長させたインジウムヒ素量子細線について、マイクロX線回折測定をおこなった。 X線ビーム位置と、試料基板上でのナノ構造の位置とを一致させることを容易にするため、基板には、人工的なパターンを刻んだ酸化膜付きシリコン基板を用いた。その結果、単一量子細線からの回折に特徴的な干渉パターンを有するX線回折像を取得することに成功した。 上記のように、本年度においては、X線マイクビームの作製・量子細線のその場X線回折・量子細線のマイクロX線回折という、本研究の遂行のために不可欠な要素技術を確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までに、X線マイクビームの作製・量子細線のその場X線回折・量子細線のマイクロX線回折という、本研究の遂行のために不可欠な要素技術を確立できた。今後、これらを組みあわせることによって、単一ナノ構造のエピタキシャル成長条件下におけるその場X線回折という研究目的を達成できる見込みが立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)X線マイクロビーム装置の安定性を向上させる。これまでの研究により、X線マイクロビーム装置において、実験室内の振動による影響はほとんどないことがわかっている一方で、室温の変動によると推測される数時間以上の時間スケールでのドリフトが問題点として浮かび上がってきている。フィードバックシステムの導入などにより、ドリフトを抑制する。 (2)量子細線のエピタキシャル成長中のその場マイクロX線回折を実施する。 (3)量子細線の測定にはめどが立ちつつあるので、今後、量子ドットの測定に向け、成長条件探索を進める。
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