2012 Fiscal Year Annual Research Report
エピタキシャル成長その場マイクロX線回折による単一ナノ構造解析と均一性制御
Project/Area Number |
22360010
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
高橋 正光 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (00354986)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 放射光X線回折 / 量子細線 / 分子線エピタキシー |
Research Abstract |
自己形成量子ドット・量子細線など半導体ナノ構造のエピタキシャル成長において、構造の均一化は重要な課題である。本研究は、同じ成長条件下にありながら、個々のナノ構造間にゆらぎが生じる原因を解明するため、単一の量子ドット・量子細線などのエピタキシャル成長条件下におけるその場X線回折をおこなうことを最終的な目的としている。 本年度に測定対象としたのは、GaAsおよびInAs量子細線である。量子細線の成長方法としては、金微粒子を触媒とするVLS(Vapor-Liquid-Solid)成長法と、GaもしくはIn自身が触媒として作用する自己触媒成長法の両方を実施した。 自己触媒InAs量子細線では、同一基板上で、特定の結晶構造を持った量子細線の分布をマッピングすることに成功した。リソグラフィーにより規則的に配列した開口部をもつマスク付きシリコン基板を用い、結晶成長その場X線回折装置内で自己触媒InAs量子細線を成長させた。量子細線に特有なウルツ鉱構造からのマイクロビームX線回折強度を測定しながら、試料基板をスキャンすることで、量子細線の配列に対応する強度分布のデータが取得された。これにより、マイクロビームX線回折を用いて、量子細線の構造ゆらぎをその場評価する手法が実証された。 金触媒を用いたGaAs量子細線成長では、成長条件および成長段階による結晶構造の変化が熱力学的な核形成理論に基づいて理解できることを示した。また、成長中断中にウルツ鉱構造が閃亜鉛鉱構造に変化するという予想外の現象をその場X線回折により見出すことができた。これらは、量子細線の構造制御につながる知見である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究を通じて、量子細線・量子ドットの構造ゆらぎの原因を解明し、構造制御につなげるその場X線回折測定の技術的基盤が蓄積された。マイクロビームX線回折の実験において、実験室の温度変化による光学系の不安定性が測定精度を低下させる主要な原因であることをつきとめ、室内の熱源をできるだけ取り除くなどの対処を進めた。その結果、成長条件下で単一量子細線からのX線回折およびその基板上での分布の測定ができるようになった。シリコン上に成長させたサブミクロンサイズのGaAs島の測定もおこない、量子ドット構造の測定に向けた道筋をつけることができた。以上のように、単一の量子構造のその場X線回折測定技術が進んだほか、当初は予想していなかった興味深い結果も得られている。 また、応用物理学会、分子線エピタキシー国際会議を含む国内外での学会発表や、国際学術誌上での論文発表をおこない、成果発表を着実に進めた。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、測定時間を短縮することが光学系の不安定性を取り除き、良質のデータをとるために重要であることが明らかとなっている。そのため、測定技術の面からは、高感度な検出器を利用できるよう、回折計まわりのアクセサリの整備およびソフトウェアの作成を進める。試料の面では、パターン基板上に作成した細線・ドット構造に集中する。量子細線については、コアシェル量子細線など、より複雑な構造の試料を作製し、その場マイクロビームX線回折の測定手法としての可能性を拡大する。量子ドットについては、パターン基板上に選択成長したサブミクロンサイズの島状結晶について、結晶内部のひずみや欠陥の評価技術への発展をめざす。
|
Research Products
(11 results)