2012 Fiscal Year Annual Research Report
非線形光導波路を用いた超広帯域テラヘルツ波発生に関する研究
Project/Area Number |
22360026
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川瀬 晃道 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 教授 (00296013)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 非線形光学 / 非線形光導波路 / テラヘルツ波 |
Research Abstract |
今年度は、スラブ導波路に代わり、結晶の損傷閾値を確認しつつリッジ導波路を導入し、2次元的に励起光を閉じ込めることによる高効率化を図った。非線形光導波路中の遅延分散の影響により、導波路中を数mm伝播するとフェムト秒光パルス幅が拡がってしまうため、広帯域性と高効率性を両立するような導波路長の最適条件の探索も行った。一方で、導波路長が1mm程度でも十分な変換効率が得られた場合、テラヘルツ波の点光源として扱えるという長所にもつながるという知見を得た。導波路サイズに比べテラヘルツ波長がはるかに長いため強く回折が生じることから、その導波路外への結合には従来我々が用いてきたSiプリズムカプラーを適用した場合結合効率が大きく低下する。そのため、円錐レンズを斜めに切断した変形タイプのプリズムカプラーを導波層に圧着することでコリメートされたテラヘルツビームの放射を得た。なお、Siレンズはスペクトルの超広帯域化に伴い分散で使えなくなることも予想されたが、発生した0.1-7THz帯では、ある程度コリメートビームを得ることができた。 平行して当研究室で育成している有機非線形結晶を用いた導波路化も試みた。我々の研究室内で有機非線形結晶を育成している強みを活かし、独自の蒸着法により結晶成長を直接基板上で行うことにも成功した。得られた導波路サイズは約5ミクロン厚のスラブ型導波路であり、導波路長は約100ミクロンであり、テラヘルツ波発生には十分なサイズである。今後、この導波路に励起光入射を試みる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、チェレンコフ型位相整合方式を無機非線形光学結晶や有機非線形光学結晶などを用いた非線形光導波路に適用し、高効率かつ平坦スペクトルな超広帯域テラヘルツ光源を実現することを目的とする。その際の重要課題として、1)導波路構造の最適化(スラブ型、リッジ型など)、2) 非線形導波路中の分散の影響への対応、3)導波路から強く回折するテラヘルツ波の取り出し方式の工夫、などがあげられる。これにより得られる平坦スペクトルかつ高輝度な超広帯域テラヘルツパルスは、フーリエ変換の関係からモノサイクルな超短テラヘルツパルスに直結する。 我々は、スラブ導波路に代わり、結晶の損傷閾値を確認しつつリッジ導波路を導入し、2次元的に励起光を閉じ込めることによる高効率化を図った。非線形光導波路中の遅延分散の影響により、導波路中を数mm伝播するとフェムト秒光パルス幅が拡がってしまうため、広帯域性と高効率性を両立するような導波路長の最適条件の探索も行った。一方で、導波路長が1mm程度でも十分な変換効率が得られた場合、テラヘルツ波の点光源として扱えるという長所にもつながるという知見を得た。導波路サイズに比べテラヘルツ波長がはるかに長いため強く回折が生じることから、その導波路外への結合には従来我々が用いてきたSiプリズムカプラーを適用した場合結合効率が大きく低下する。そのため、円錐レンズを斜めに切断した変形タイプのプリズムカプラーを導波層に圧着することでコリメートされたテラヘルツビームの放射を得た。なお、Siレンズはスペクトルの超広帯域化に伴い分散で使えなくなることも予想されたが、発生した0.1-7THz帯では、ある程度コリメートビームを得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、前述した目的を達成するために、結晶の損傷閾値を確認しつつ2次元的に励起光を高密度に閉じ込めることによる高効率化を図る。平行して当研究室で育成しているOH1結晶を用いた導波路化も試みる。その際、OH1結晶でコリニア位相整合条件が得られることに配慮しつつ、数ミクロン厚のOH1非線形光導波路を世界初の気相蒸着法による作成を検討する。我々の研究室内でOH1結晶を育成している強みを活かし、種々のサイズの結晶成長を直接基板上で行うことも試みる。 次いで、超短テラヘルツパルスのトモグラフィーへの展開について、20フェムト秒(fs)のパルス幅を有するファーバーレーザーを励起光源として、テラヘルツ時間領域分光法(TDS:THz Time Domain Spectroscopy)と同様のシステムのテラヘルツ発生素子として上述の非線形光導波路を導入する。発生した超短テラヘルツパルスをターゲットに照射し、反射パルス波形からトモグラフィー画像を構成するTime of Flight方式により、かつて実現し得なかったサブミクロンという極限的に高い奥行分解能を目指す。 さらに、LiNbO3導波路では7THz付近まで、OH1導波路では数十THzまでフラットに発生可能であると考えられるため、空間分解能に関してもテラヘルツ技術としては極限的に高い数ミクロン~数十ミクロンが得られることを確認する。平行して、励起レーザーパルス強度のさらなる増大についても検討する。なお、10fs程度の超短レーザーパルス光でテラヘルツパルスを発生させる場合に光キャリアそのものが見えてくるため、発生するテラヘルツ電磁波をきれいなモノサイクルにすることが難しいということは予想される課題である。
|