2012 Fiscal Year Annual Research Report
半導体結合共振器による面型テラヘルツ波発生素子の研究
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22360030
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
北田 貴弘 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 特任准教授 (90283738)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井須 俊郎 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 特任教授 (00379546)
森田 健 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 特任講師 (30448344)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | テラヘルツ/赤外材料・素子 / 微小共振器 / 非線形光学応答 / MBE、エピタキシャル / 半導体ナノ構造 |
Research Abstract |
結合した半導体多層膜共振器に生じる2つの異なる周波数の共振器モードを利用した面型テラヘルツ波発生素子の実現を目指し、本年度は、テラヘルツ帯差周波信号のシミュレーションの改善、分極反転型GaAs/AlAs結合共振器の差周波信号評価、(113)B基板上の量子ドットを取り入れた結合共振器構造の試作を中心に行った。超短パルス光照射で生じるテラヘルツ帯差周波信号の時間波形をフーリエ変換してパワースペクトルを導出した実験結果とそれに対応するシミュレーション結果を比較すると、高周波数領域で著しく異なることがわかった。周波数に対して指数関数で減衰する検出感度を取り入れることで実験結果をよく再現でき、シミュレーションの精度を高めることができた。分子線エピタキシー(MBE)による多層薄膜の結晶成長と、表面活性化法による常温でのウエハ直接接合により作製した分極反転型GaAs/AlAs結合共振器のテラヘルツ帯差周波信号測定を実施した。エピタキシャル成長のみで作製した非反転の結合共振器構造に比較して、2つの共振器モードによる差周波発生が5倍程度増強する結果が得られた。シミュレーションで予測される値の15倍よりもまだ小さいため、多層膜構造の品質を高めることでさらなる改善が見込める。(113)B 基板上に作製した1.5 um帯のInAs量子ドットの積層構造に超短パルスレーザ光を照射すると明瞭な第二高調波発生信号が得られた。(113)B上の量子ドットが二次非線形光学特性に優れることを示唆している。AlAsを共振器層とする結合共振器構造にこの量子ドットを埋め込むことを試みた。MBE成長を行ったところ、比較的に平坦なヘテロ界面を多層膜構造が得られ、反射率スペクトルには2つの共振器モードが明瞭にみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウエハの直接接合による分極反転制御が、テラヘルツ帯差周波発生に有効であることが、シミュレーションだけでなく実験的にも確かめられた点が大きな進展であった。しかし、実験的に得られた分極反転による増大因子が予想される値よりも小さく、その検証はまだ不十分である。増大因子が小さいひとつの理由として、多層膜構造成長時の成長速度のわずかな変化に起因した各層の厚さの不均一による差周波発生効率の低下が考えられ、これを改善する必要がある。(113)B基板上にも量子ドットが形成され、二次非線形光学特性に優れることを示唆する結果は得られているが、その特性を十分に引き出すには量子ドットの品質をさらに高める必要を感じる。
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Strategy for Future Research Activity |
実験室レベルで結晶成長時の膜厚の不均一性を解消する手法を導入して、多層膜結合共振器構造の高品質化を試みる。(113)B基板上の量子ドット形成条件についても見直すことで、サイズ不均一をできるだけ抑えて高品質化を図る。量子ドットを導入した結合共振器構造を、結晶成長とウエハ接合により作製し、超短パルス光による時間領域テラヘルツ分光計測によりテラヘルツ波発生素子としての有用性を明らかにする。
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