2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22360053
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
松岡 三郎 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (10354250)
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Keywords | 水素エネルギー機器 / 耐疲労特性 / 炭素鋼 / 組織微細化 / 炭化物分散 |
Research Abstract |
本研究の目的は,安全な水素エネルギー社会の構築を実現するため,耐水素疲労炭素鋼が製造できる指針を確立することである.バナジウムVとモリブデンMoを微量添加した炭素鋼を製造し,製造した一部の炭素鋼には加工熱処理を施す.VCやMoCなどの微細炭化物の分散あるいは加工熱処理による組織の微細化で高圧水素ガス中の疲労き裂進展特性が向上するかどうかを調べ,耐水素疲労炭素鋼が製造できるかどうかを明らかにする.金属疲労は破壊事故の約80%に関係する.そのため,機械や構造物の安全性を確保するためには,金属疲労の撲滅が不可欠である 本年度(2010年)は,0.05C-0.30Si-1.5Mn(mass%)の炭素鋼,この炭素鋼にVを0.27mass%添加させたV添加炭素鋼を製造した.この二つの炭素鋼に溝ロール圧延を施し、組織(フェライト結晶粒)を細粒化した.比較材として,通常の焼入れ・焼戻した炭素鋼S45Cを用いた.引張強さは,V添加細粒炭素鋼で937MPa、細粒炭素鋼で924MPa、S45C炭素鋼で906MPaであった.これらの3つの炭素鋼の切欠試験片に水素をチャージし,疲労き裂進展特性を調べた.その結果,疲労き裂進展速度比(da/dN)H/(daldN)は,通常のS45C炭素鋼では約25倍になった.ここで,(da/dN)Hは水素チャージ試験片の疲労き裂進展速度、(da/dN)は未チャージ試験片の疲労き裂進展速度である。一方、(da/dN)H/(da/dN)は,細粒炭素鋼では,約5倍となり、V添加細粒炭素鋼では約2倍に留まり,耐水素疲労特性は大幅に改善した.これらの結果から,炭素鋼において,フェライト結晶粒の微細化と微細V炭化物の分散を組み合わせることにより、耐水素疲労炭素鋼を製造できる可能性が明らかになった.来年度は,Mo添加炭素鋼の耐水素疲労特性を調べる
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