2011 Fiscal Year Annual Research Report
白内障手術における角膜内皮損傷機構の解明およびその制御
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22360074
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
榊原 潤 筑波大学, システム情報系, 准教授 (10292533)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加治 優一 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50361332)
大鹿 哲郎 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90194133)
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Keywords | 眼科学 / 流体工学 / 白内障 / 超音波乳化吸引術 / 乱流 / 三次元画像計測 |
Research Abstract |
当該年度は、豚から摘出した眼球に対して白内障乳化吸引術を施術し、前房内を飛散する水晶体片の挙動を捉えると共に、水晶体片衝突に伴う角膜内皮細胞の損傷状況を観察した。 前年度に開発した三次元画像処理計測システムを用いて、白内障乳化吸引術施工下の前房内における水晶体片の運動を調べた。吸引流量や灌流圧力などは実際の手術時の設定と同様とした。水晶体片は最大100[mm/s]程度の速度で飛散し、概ねその速度を維持したまま角膜内皮に接触することが分かった。 水晶体片の衝突が角膜内皮細胞に与える影響を調べるため、シャーレ上にconfluentな状態で培養した豚眼角膜内皮細胞に水晶体片を衝突させ、細胞の剥離率を調べた。樹脂製ノズルを細胞面に対して垂直に設置し、ノズルから細胞面に衝突する水流(軸対称衝突噴流)を形成した上で、水晶体片を混入して水晶体片を細胞面に衝突させた。 衝突させた水晶体片は豚眼から摘出された水晶体を1m立方程度の大きさに切断したものとした。培養細胞は長期間(5週間)かけて培養したものと、短期間(3週間)で培養したものの2種類を用意した。衝突噴流の速度を前房内における水晶体片の飛散速度と同程度とした場合、細胞の剥離率は短期間および長期間培養された細胞についてそれぞれ約10%および3%であった。この値は、水晶体片を混入しなかった場合の剥離率(約2%)に比較して有意に大きい。さらに、衝突噴流速度を150mm/sに増加させた場合には、それぞれ約24%および15%と増大した。 ここまでの結果に基づき、白内障手術下における水晶体片衝突が角膜内皮細胞の剥離の一因となることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前房内における水晶体片の運動を定量的に捉えると共に、水晶体片衝突に伴う細胞剥離率を測定できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度は培養細胞を用いて細胞剥離率を測定したが、より実際の状況に即した実験を行うために、培養細胞の代わりに豚眼から摘出した角膜自体を用いて水晶体片衝突実験を行う予定である。
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