Research Abstract |
1.平成22年度に引き続き,水路(流路断面0.1×0.1m2)を用いたスカラー混合の実験を行った.水路の入口部に樹脂製のフラクタル格子を設置し,その下流に生成されるマルチスケール誘起乱流の特性とスカラー拡散場を時系列粒子画像流速計(TR-PIV)と平面誘起レーザ蛍光(PLIF)法を用いて計測した.特に,今年度は,従来の格子乱流中でのスカラー混合との違いについて,スカラー散逸率や局所スカラー勾配に関する統計量,混合界面形状のフラクタル次元による考察等を行い,より詳細な検討を行った.さらに,TR-PIVとPLIFを用いた速度と濃度の同時計測のための予備実験を行った.本格的な同時計測は平成24年度に実施予定である. 2.平成22年度に引き続き,フラクタル格子を用いた風洞実験を行った.今年度は,前年度に作成した自動トラバース装置とI型およびX型熱線プローブを用いて計測を行った.各種乱流統計量の流れに垂直なy-z断面内分布計測するとともに,乱流エネルギ収支式に現れる各項(対流項、生成項,三次相関項,粘性拡散項,散逸項)を実測した.これによりフラクタル格子乱流におけるエネルギ生成と減衰のメカニズムを明らかした.また,積分長と速度変動強度で構成される乱流の不変量についても考察を行った.その結果,従来の正方格子乱流場ではサフマン乱流に対応する不変量が存在するのに対して,フラクタル格子乱流場においては木変量が存在しないことが示された. 3.平成22年度に引き続き,マルチスケール誘起乱流中でのスカラー拡散に関する三次元直接数値解析(DNS)を行った.これまでは断面平均された乱流統計量しか得られていなかったが,今年度の計算で中心軸上分布を得た.これにより,風洞や水路実験結果との比較が可能となった.その結果,速度変動強度に関して,本研究で実行した同じレイノルズ数を有する水路実験結果とDNSの結果がよく一致することが確認された.また,乱流の減衰域において,速度変動強度のみならず,静圧変動強度も指数的に減衰することが初めて明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに研究を遂行し,水路実験,風洞実験,数値計算の全てにおいて新しい知見が得られたことによる.
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Strategy for Future Research Activity |
水路を用いた混合実験においては,TR-PIVとPLIFを用いた速度と濃度の同時計測を行い,速度変動と濃度変動の結合統計量を評価する.風洞実験では,超小型静圧プローブによる乱流中の瞬時静圧変動計測技術を確立し,その計測精度を確認した後,フラクタル格子乱流中の静圧変動場の計測を試みる.さらに,X型熱線プローブと超小型静圧プローブを組み合わせることにより,乱流中の速度変動と静圧変動の同時計測を行う.数値計算においては,マルチスケール誘起乱流とその中でのスカラー輸送に関するDNSを行い,中心軸上および流れに垂直な断面内での乱流統計量を評価し,実験結果と比較する.
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