2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22360078
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
花崎 秀史 京都大学, 工学研究科, 教授 (60189579)
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Keywords | 流体工学 |
Research Abstract |
分子拡散係数の異なる2つの物質が共存する系における乱流拡散は、結晶合成、高分子溶液系、燃焼の他、気候変動を決定づける海洋大循環など、非常に多様な系において重要である。本研究では、熱・塩分・浮遊砂塵のような、密度成層の形成に寄与するアクティブスカラーが2種類存在する成層乱流中のスカラー多重拡散を、水槽実験(PIV, LIF)、大規模数値計算(DNS)、及び、RDT乱流理論により解明する。特に、複数アクティブスカラーが持つ、(1)多重散逸スケール効果、(2)相互作用効果、(3)多重成層効果による特異な乱流構造の解析を行い、それらが実用上重要な統計量である乱流スカラー拡散係数や位置・運動エネルギーに与える影響を解明し、多重拡散乱流モデル構築のキーポイントを解明する。平成23年度は、水槽LIF実験については、連続発振固体レーザー(488nm)に対して用いる蛍光染料としてまず安価なウラニンについてテストを行ったが、Photobleachingが短時間で生じるため、本実験には適さないことが分かった。次いで、Pyrromethene556(吸収波長492nm蛍光波長533nm)のテストを行い、Photobleachingに対する抵抗性もある程度強く、概ね良好な結果を得た。ただし、当初予定したローダミン110(吸収波長496nm,蛍光波長520nm)のテストがまだ行えていない。数値計算(DNS)に関しては、スペクトル法によるDNSを周期境界条件のもとで行った。本年度は特に、成層乱流中で流体に乗って動くパッシブな粒子の運動をラグランジュ的に追跡し、粒子拡散のプラントル数Pr、レイノルズ数Re依存性についての解析を行った。その結果、ラグランジュ的な水平拡散はPrに依存しないが、鉛直拡散においては、分子拡散が効いてくる長い時間スケールではPr依存性が現れ、高プラントル数の方が鉛直変位の2乗平均が小さくなることなどがわかった。RDT理論に関しては、二重拡散成層乱流に対してRDT理論による数値解を求めると同時に、上記の数値計算(DNS)の結果のプラントル数依存性をRDT理論を用いて説明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水槽HF実験においては、Pyrromethene556(吸収波長492nm,蛍光波長533nm)のテストを行い概ね良好な結果を得た点は今後につながる結果であった。ただし、当初予定したローダミン110(吸収波長496nm蛍光波長520nm)のテストがまだである。また、数値計算(DNS)については平成23年度にLagrange的に粒子拡散を追跡するプログラムを開発できたため、今後、オイラー的な解析のみならずラグランジュ的な解析も行え、今後の研究の展開を広げることができた。RDT理論に関しても、ラグランジュ的な拡散の数値計算結果を説明することができ、一定の成果が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
水槽実験に関しては、当初予定した蛍光染料であるローダミン110(吸収波長496nm,蛍光波長520nm)のテストをまず行う必要がある。ややその上で、温度成層を入れた実験を進める。数値計算(DNS)については、2種のスカラーが共存する場合の計算を進めていく。その際、平成23年度に開発したラグランジュ的な粒子拡散のプログラムも併用して、オイラー、ラグランジュの両面からの解析を行い、当初の予定よりも進んだ解析を行えると考えている。RDT理論については、数値計算結果の説明(オイラー、ラグランジュ拡散共に)を通じてその有用性を明らかにしていく。以上3種の手法を総合的に用いて、複数のスカラーが混在する成層乱流中の拡散現象の解明を進める。
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