2010 Fiscal Year Annual Research Report
電気化学方式水素ポンプの熱工学的解析に基づいた高圧化
Project/Area Number |
22360089
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 衡平 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (10283491)
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Keywords | 物質輸送 / 昇圧最適化 / 高分子電解質膜 |
Research Abstract |
本研究の目的は電気化学水素ポンプを設計・製作し、水素ポンプの効率に関わる、ガス透過性、不可逆損失を実験研究から明らかにし、水素ポンプの適切な昇圧範囲を熱力学的検討から見出し、高圧域における水素ポンプの設計・運転指針を整備することにある。 本年度はこのうち(1)安全な高圧水素ポンプ実験システムの設計製作し、性能を支配する(2)高分子電解質膜(PEM)の機械的強度、および透過性質を調査した。このうち先ず(1)では、水素ガスを4MPaまで昇圧するために、関連法規に準拠した、また専門家からのアセスメントを十分に反映した設計を行った。水素ポンプセル自身に加え、これを囲む容器にも十分耐圧性を持たせる二重容器構造とした。更に、セルと容器の間には絶えず窒素ガスをフローさせ、かつこの窒素中の水素ガスを絶えず監視し、500ppm濃度を超えると自動停止する仕組みを与え、耐圧、防爆、水素漏洩を考慮した実験システムを構築した。試運転した結果、これらの安全機能は正常に動作することが分かり、当初の目標に達した。 また(2)PEMの性質調査では、これに最大4MPa程度の差圧が負荷されるために先ず機械強度を評価した。PEMを円周支持し、その直径を0.5mmと仮定したところ、PEMには数10MPaの引っ張り応力がかかると計算できた。文献値を参照すると、Nafionは破断し、PBIは破断に耐えうると評価できた。ただし実際には仮定した直径よりも小さな径で円周支持できるため、Nafionの可能性も示唆した。次に、ポンピング時の水素逆拡散が電流効率を下げると予想されるため、文献値の透過率から逆拡散流量を求め、ポンピング流量と比較した。その結果、市販のPEMいずれにおいても逆拡散流量は、ポンピング流量の0.001~0.0001倍であり無視できることがわかった。以上の理論的な考察を基礎に、平成23年度は、構築できた実験システムを使って水素ポンプ性能を実際に評価する。
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