Research Abstract |
本研究では,化粧粒子および肌の光学的性質の詳細を調べるとともに,皮膚内部を含む微視的な光伝播と関連づけて,肌の見え方に及ぼす,化粧粒子およびその塗り方の影響を明らかにすることを目的とする.また.この知見に基づき,粒子デザインの段階から皮膚の見え方を予測できる解析ツールの開発をめざす. 平成22年度では,化粧を施される肌の光性質を明らかにするために,皮膚の散乱位相関数の計測装置を開発し,実際に,培養皮膚を対象に計測を行った.加えて,散乱位相関数の波長依存性についても明らかにした. また,この年度では,皮膚のキメが肌の見え方に与える影響を明らかにするために,加齢により変化するキメ構造が,その光伝播に与える影響を,実験と解析により評価した.まず,キメ構造を転写したレプリカを作成し,その構造により反射される光の2方向分布を計測した.この結果と,独自に考案した解析モデルによる予測と比較し,解析モデルの有用性,妥当性を検証した.加えて,20代女性から50代女性のキメ構造の特徴をレーザー顕微鏡により調べた.その結果,肌表面の凹凸の空間周波数が,年齢とともに減少すること,特に,40才以降にその減少が顕著であることがわかった.さらに,得られた構造データを基に,光散乱伝播解析を行った結果,年齢によるキメ構造の違いは,皮膚表面のにおける反射の指向性,特に,鏡面反射方向に現れることが明らかになった.この知見は,これまでの肌のてかりに関する経験的な見方と一致した.
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