Research Abstract |
安全・安心・快適な幼児同乗用自転車の開発を目指し,H22年度は,(1)自転車の動的モデルのシステマティックな構築方法,(2)モデルに基づいた自転車動特性・安定性・操作性の解析方法の検討,(3)ハンドルアシスト機構の開発と実験的検証,(4)人間の意志と自動制御システムの相互干渉の検討,を行った.当研究グループの先行研究結果として,自転車の後部座席に幼児を同乗させると,前部座席,または,前部・後部座席両方に幼児を同乗させた場合よりも安定性が劣化することが知られていた.これを解析的に示すべく,(1)のように自転車の挙動を示す数学モデルを導出した.この数学モデルにより,自転車の動特性解析,安定性解析,操作性解析,制御系設計が可能となり,モデル導出方法を学会で報告した.次いで,(2)のようにモデルを基に解析を行い,幼児同乗時によって生じる自転車動特性の変化がシステムの不安定極と不安定零点の変動によって表されることを定性的に示した.定量的解析は次年度以降の課題とする.幼児同乗による自転車動特性変化の具体的な補償策として,自転車アシスト機構を構築することを目指し,(3)のようにハンドル部におけるパワーステアリング機構を提案,その試作機の設計・製作を行った.外乱オブザーバをベースとした制御系を設計し,機構に実装することで実験的検証を行った.その結果,幼児が同乗してハンドルが重たくなった場合でも操作性を回復できることを示し,その成果を学会にて報告した.自転車は不安定な車両であり,パワーステアリング部に自動制御による車両安定化機能を付加することが考えられるが,操縦者の意図を考慮しないと自動制御が操作者の操縦と相反し,かえって挙動を不安定化させてしまうことが懸念される.そのため,自動制御と手動制御の相互干渉を考慮した制御系を開発するための環境構築と基礎的な研究を始めた.これらの具体的な発展は次年度の課題とする.
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