Research Abstract |
ステータに用いる弾性表面波素子の波動励振および回収効率に関する検討と,弾性接触解析シミュレーションおよび試作・実験による動作条件の最適化検討した。ステータの電極に関しては,励振および回収効率はそれぞれ80%程度であり,波動の回折効果による開口幅からの広がりを考えると,既に高い効率で動作した。導波路形成による漏れの低減も考えられるが,それほど効果が見込まれないと考えられる。 モータ特性の評価のために,駆動周波数約10MHzで,ステータ基板としては,長さ80mm,幅13mm,厚さ1mmのニオブ酸リチウム128°回転Y板,X伝搬を用いた。スライダについては,ステータの波動伝搬幅より僅かに狭い8mmとし,長さは動作実験の結果をふまえ4mmの素子を用いた。シミュレーションに依れば,波動伝搬パワーからモータ機械出力への変換効率は,40%程度の効率が見込まれた。実験では,ミリメートルの全体寸法オーダーに対して,ナノメートルの平滑度を持って接触を実現することは困難であることが予想されたが,最大32%という高い変換効率が実験により得られた。モータの動作特性としては例えば,予圧40Nのときに,無負荷速度0.9m/s,推力13Nが得られ,機械出力は最大で3Wとなった。 モータとしての質量当たりの出力などを評価するため,予圧機構などを含めて,できるだけコンパクトで安定した動作が可能なモータ構造を検討して試作した。試作したモータについては,速度,推力,効率などの性能試験を行った。無負荷速度の低下が大きく,構造上の問題があることがわかった。また,推力についても実験装置ほどの値は得られていないが,質量約10gのデバイスで,700gの負荷を持ち上げられることを実験により示した。自重の70倍の負荷を持ち上げられる高出力なアクチュエータであることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
波動伝搬パワーからモータ機械出力への変換効率として30%以上の高い効率が得られている。シミュレーションでは,動作条件によりさらに高い効率も見込まれるが,現実の工作精度を考えると十分に高いといえる。また,モータの出力として,素子重量の70倍もの推力を実現しており,アクチュエータとしては極めて高い推力/重量比を実現していることが実証できた。
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Strategy for Future Research Activity |
実験装置においては,かなり高い性能のアクチュエータであり高出力を実現していることを実証している。しかし,動作に関するパラメータが多く,どこが最適値であるかは,様々な条件により異なってくることから,動作例を上げて傾向を示すこととしていく。また,実際のアクチュエータとして考えた場合には,重厚で精密な実験データを軽量でコンパクトな実機でどこまで実現できるかが重要になると考えられる。そこで,実験装置でのデータをまとめるとともに,コンパクトなアクチュエータにおいて,どこまで実験装置に近い動作状況で動作させて,性能向上が可能であるかを検討する必要がある。
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