2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体ナノモーターで駆動する光学素子とその制御機構の開発
Project/Area Number |
22360103
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
平塚 祐一 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 准教授 (10431818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新田 高洋 岐阜大学, 工学部, 助教 (20402216)
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Keywords | マイクロマシン / マイクロ・ナノデバイス / ナノバイオ / 分子モーター / 生体分子 |
Research Abstract |
本研究の目的は、生物の保護色機能の作動原理から着想を得たモータータンパク質で駆動する光学デバイスを創製することである。色素細胞内には繊維状のタンパク質群が特殊なネットワークを構成しており、モータータンパク質の作用により色素顆粒がそのネットワークに沿って運搬され細胞の色変化を作り出している。これまで研究代表者は、この分子システムを生体外に再構築した光学素子の開発に取り組み、再構築に成功させてきた。しかし、この細胞のシステムは複雑で再構成プロセスも煩雑となり再現性・発展性に問題があった。そこで本研究では、色素の凝集・分散をより単純な原理で実現し、素子の制御機構を含めた光学システムの応用展開を図る。 本年度は、本研究の重要技術であるモータータンパク質の光制御法の開発を重点的に取り組んだ。モータータンパク質が複数個結合した会合体を形成すると、そのモーター活性のため自発的に微小管アスター構造を作り、会合体はアスターの中心に凝集することが知られている。そこで本研究ではこの会合体の形成を光照射により制御するシステムを開発した。植物の光屈性現象を司るphotoropin(光センサータンパク質)のLOVJaドメインを遺伝子改良し、光照射の有無により会合体形成をする蛋白質モジュールの作成に取り組んだ。具体的はLOVJaのC末端にCaMと結合するm13ペプチドを付加し、光照射有無によりこれらの蛋白質が結合・解離する光制御モジュールの作成に成功した。今後、この光制御モジュールを使って可逆的な色素の凝集・拡散系を構築する。こうした人工的な光制御モジュールの報告例は少なく、特にタンパク質の結合解離を光により制御する報告例はない。このタンパク質モジュールは本研究のみではなく、タンパク質の立体構造の光制御や細胞機能の光制御などタンパク質工学の分野での発展が大いに期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、LOVJaとCaMおよびその結合ペプチドM13の融合タンパク質(LOV-m13-Ja-CaM)を作り、カルシウム濃度を光によって調整するシステムを構築する予定であった。しかし、この融合タンパク質を作成したところ計画通りの機能を示さなかった。融合点のリンカー長などを様々変更したにもかかわらず改善できなかった。そこで手法を若干変更し、少し難易度が低いと思われるM13とCaMの結合を光制御する方法に変更したところ、うまく光制御することに成功した(LOVJa-m13, CaM)。この方法を使っても当初の計画と同様の微小管アスター構造の光制御による形成制御が可能であり、研究全体の計画には支障がない。
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Strategy for Future Research Activity |
キネシンの会合体が自己集積的に微小管をアスター構造に変換しキネシン会合体がアスターの中心に凝集する現象を利用し、マイクロチャンバ内に色素の凝集・分散による色変化を構築する。このチャンバをガラス基板上に無数に配置しそれぞれを可逆的に制御することにより、モータータンパク質で駆動する光学素子を開発する。本年度までに本研究開発に不可欠な要素技術の一つチャンバ内での微小管のアスター構造の作製法を確立させた。さらに光照射によりタンパク質同士を結合・解離できるタンパク質モジュールの開発に成功した(光スイッチモジュール)。来年度は、これらを統合し光信号による可逆的な色素の凝集・分散をチャンバ内で実現し、モータータンパク質で駆動する光学素子のプロトタイプ作成を目指す。
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