Research Abstract |
蝶の羽ばたき飛翔は,神経(制御)系-身体-環境(流場)の動的相互作用により成立する運動形態であり,適応的運動能力の発現である.本研究では特に,羽ばたきにより創成される渦列流場という環境を用いて飛翔の安定化とマヌーバという適応的運動を実現するという観点から,蝶が適応的運動能力(運動知能)を発現するメカニズムの解明を目的とする.具体的には,(1)生体の蝶の感覚器(センサ)入力と身体の応答動作との関係(制御),(2)蝶の安定な飛翔とマヌーバを実現する制御機構に環境(流れ場)がどのように影響するか,という2点について生物学的な解析とモデルを用いた工学的な実現を併用するシステム論的アプローチにより調査している A. 生物学的アプローチ アサギマダラ蝶を経常的に供給できるようにした.マイクロCTや解剖等により,飛翔に関わる筋肉や骨格,可能な能動的動作を調べ,解剖学的理解を進めた.実験装置を構築して背中を固定した蝶の運動計測,空気力計測,流れの可視化観測実験を行い,蝶の運動と空気力を計測した.それにより,蝶が実現できる運動を調べ,数値シミュレーションの妥当性をチェックした.また,主流速度,迎角の変化に応じ,蝶がどのように動作を変えるかを調べた B. 工学的アプローチ 3次元数値モデルを構築し,実験観測データと比較して,数値モデルの妥当性や精度を評価した.次に,渦列流場が安定性と挙動に与える影響を解析した。さらに,制御結果が概周期軌道になる制御方法を検討した 飛翔安定化およびマヌーバビリティ(状態遷移能力)を探るために2次元数値モデルを構築し,実験計測と数値モデルを対応づけるパラメータを明らかにした.次に,定常羽ばたき飛行の安定性を判別し,パラメータ変化に対する飛翔性能の変化および大域的分岐構造を調べた.さらに,得られた安定飛行状態への遷移ダイナミックスを解析し,効率的な遷移を実現する有用な制御戦略を検討した
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