2011 Fiscal Year Annual Research Report
渦列環境を創成する昆虫の羽ばたき飛翔における適応的運動能力の発現メカニズム
Project/Area Number |
22360105
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
泉田 啓 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60206662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飯間 信 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90312412)
平井 規央 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (70305655)
横山 直人 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80512730)
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Keywords | 蝶 / 羽ばたき飛翔 / 神経系-身体-環境 / 環境創成 / 運動知能 / 生物学的アプローチ / 工学的アプローチ / システム論的アプローチ |
Research Abstract |
蝶の羽ばたき飛翔は,神経(制御)系-身体-環境(流場)の動的相互作用により成立する運動形態であり,適応的運動能力の発現である.本研究では特に,羽ばたきにより創成される渦列流場という環境を用いて飛翔の安定化とマヌーバという適応的運動を実現するという観点から,蝶が適応的運動能力(運動知能)を発現するメカニズムの解明を目的とする.具体的には,(1) 生体の蝶の感覚器(センサ)入力と身体の応答動作との関係(制御),(2) 蝶の安定な飛翔とマヌーバを実現する制御機構に環境(流れ場)がどのように影響するか,という2点について生物学的な解析とモデルを用いた工学的な実現を併用するシステム論的アプローチにより調査している. A. 生物学的アプローチ マイクロCTと解剖により,飛翔に関わる筋肉や骨格,可能な能動的動作を調べ,解剖学的理解を進めた.マイクロCTの画像解析により各飛翔筋を同定し,サイズを計測した.背中を固定した蝶の観測実験を行い,蝶の運動と空気力を計測した.また,自由飛翔する蝶の観測実験を行い,運動を計測し,蝶がどのように自由飛翔するかを調べた. B. 工学的アプローチ パネル法に基づく3次元数値モデルを改修し,定常的な飛翔を再現するための制御系の構成を検討した.次に,埋め込み境界法を用いて蝶の身体と流体の連成運動を求める3次元数値モデルを構築し,流れ場の構造の同定をすすめ,揚力や推力を生じさせる渦構造などを解析している.さらに,飛翔安定化およびマヌーバビリティ(状態遷移能力)を探るために2次元数値モデルを構築し,大域的分岐構造に基づいて安定飛行状態への遷移ダイナミックスと不安定飛翔状態の関係について調べた.特にはばたき運動の変化に応じて渦構造が変化し,準定常飛翔状態に漸近する例を発見した.この飛翔状態は2つの定常飛行状態の分水嶺解となっていることが示唆される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度に蝶が例年どおり採集できず,実験手法の開発に必要な蝶が確保できなかったため,それ以降の実験関連の計画に遅延が生じた.それとは直接関係しない研究項目については,概ね順調に進展している.(平成24年度には,概ね計画通り進展した.)
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画の実験の時期を延期・変更することによって対応する.(平成24年度に対応できた.)
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