2010 Fiscal Year Annual Research Report
ナノコンポジット絶縁材料の電気物性の総合的・多角的検討
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22360114
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
長尾 雅行 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30115612)
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Keywords | ナノコンポジット絶縁材料 / 電気的物性の解明 / 絶縁破壊 / 空間電荷 / 伝導電流 / 絶縁寿命 |
Research Abstract |
近年の電力流通コスト低減の要求から,電力機器の小型化が進められており,絶縁系に加わる設計ストレスは材料の本質的な破壊ストレスに近付いている.その要求に応えるため,素材の性質の補強またはその改質を行う目的で添加剤・充填剤が高分子絶縁材料に配合される.最近ではナノテクノロジーが注目を集めており,国内外における高分子絶縁材料の分野でも粒径が数十nmであるナノ充填剤(ナノフィラー)を混入させた高分子絶縁材料の研究が開始されている.本研究では,絶縁材料への適用を目指したMgO/LDPEナノコンポジットの様々な絶縁特性を同一の研究機関において多方面から解明することを目的とした. MgO/LDPEナノコンポジット内部の空間電荷を測定した結果,平均電界約200kV/mmまでは正電荷が増加したが,さらに高電界では正電荷の蓄積は減少に転じた.これは,無添加LDPEにおいて,電界の増加と共にホモ電荷が蓄積し続けた結果と異なる.さらに,MgO/LDPEナノコンポジットの伝導電流を測定した結果,平均電界約200kV/mmまでは伝導電流が上昇し続けたが,さらに高電界での電流上昇率は減少に転じた.これは,無添加LDPEにおいて,伝導電流が上昇し続けた結果と異なる.これらのことから,高電界下における空間電荷の抑制効果と伝導電流上昇率の抑制効果が,MgOナノフィラー添加による直流絶縁破壊の強さの上昇をもたらしている可能性が示唆された. 直流電圧下におけるMgO/LDPEナノコンポジットの寿命特性(V-t特性)を調査した結果,MgO/LDPEナノコンポジットは無添加LDPEより絶縁寿命時間が長いことがわかった.また,一定直流電界下において,MgOナノフィラーがLDPE中の空間電荷を抑制する結果を得ていることから,この空間電荷抑制効果がMgO/LDPEナノコンポジットの長寿命化に関係していると考えられる.
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