2011 Fiscal Year Annual Research Report
ナノコンポジット絶縁材料の電気物性の総合的・多角的検討
Project/Area Number |
22360114
|
Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
長尾 雅行 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30115612)
|
Keywords | ナノコンポジット絶縁材料 / 電気的物性の解明 / 絶縁破壊 / 空間電荷 / 伝導電流 / 絶縁寿命 |
Research Abstract |
近年の電力流通コスト低減の要求から,電力機器の小型化が進められており,絶縁系に加わる設計ストレスは材料の本質的な破壊ストレスに近付いている.その要求に応えるため,素材の性質の補強またはその改質を行う目的で添加剤・充填剤が高分子絶縁材料に配合される.最近ではナノテクノロジーが注目を集めており,国内外における高分子絶縁材料の分野でも粒径が数十nmであるナノ充填剤(ナノフィラー)を混入させた高分子絶縁材料の研究が開始されている.本研究では,絶縁材料への適用を目指したMgO/LDPEナノコンポジットの様々な絶縁特性を同一の研究機関において多方面から解明することを目的とした. 直流ランプ電圧下におけるMgO/LDPEナノコンポジットの絶縁破壊特性を測定した結果,MgO/LDPEナノコンポジットはMgO無添加試料よりも高い絶縁破壊の強さを有することがわかった.さらに,空間電荷と伝導電流を同時測定するための電極系と測定回路を構築し,MgO/LDPEナノコンポジットの空間電荷と伝導電流をランプ電圧下において同時測定した.このとき,測定された空間電荷分布から電界分布を求め,試料内部の最大電界から平均印加電界を引いた値を電界増加量と定義した。その結果,MgO無添加試料では平均電界の増加とともに負電荷が形成され、単調に電界増加量および伝導電流が増加したのに対し,MgO/LDPEナノコンポジットは,電界増加量も小さく、伝導電流の値も単調に増加した。このことから,MgOナノフィラー添加に伴って電極近傍にホモ空間電荷がトラップされ、試料内の空間電荷が減少したことが示され,これが直流絶縁破壊の強さの上昇をもたらしている可能性が示唆された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MgO/LDPEナノコンポジットの直流ランプ電圧下における絶縁破壊特性を取得したことに加えて,空間電荷と伝導電流の同時測定システムを構築し,絶縁破壊に至るまでの空間電荷と伝導電流特性を取得している.これらの結果から,MgOナノフィラー添加が空間電荷と伝導電流,絶縁破壊特性に与える影響を一連の破壊プロセスの中から明らかにしつつあるため,おおむね順調に進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られたMgO/LDPEナノコンポジットの直流ランプ電圧下における絶縁破壊特性の知見をもとに,空間電荷蓄積過程がより明確に見られる直流一定電圧試験と直流プレストレス試験を実施し,絶縁破壊特性を取得し,空間電荷と伝導電流の同時測定結果と併せて,一連の破壊プロセスからMgOナノフィラー添加効果を明らかにする予定である.
|
Research Products
(4 results)