2011 Fiscal Year Annual Research Report
次世代REBCO超伝導線材における交流損失の温度スケーリング則に関する研究
Project/Area Number |
22360116
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
岩熊 成卓 九州大学, 大学院・システム情報科学研究院, 准教授 (30176531)
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Keywords | 超伝導材料・素子 / REBCO / 交流損失 / 電気機器工学 / 電気電子材料 |
Research Abstract |
REBa_2Cu_3O_<7-x>(RE:Rare Earth,Y,Gdなど、以後REBCO)超伝導線材は、次世代の超伝導線材として世界中で開発競争が進められている。REBCO超伝導線材は臨界電流特性のみならず交流損失特性においても大きな異方性を持ち、機器における総熱負荷の大半を垂直磁界により誘起されるREBCO線材の交流損失が占める。この交流損失の低減が超伝導機器開発の喫緊の課題であった。筆者らはすでにこの問題解決のための手法を考案し、多層コイルでの検証も行った。このような状況において、超伝導機器設計のためには超伝導巻線における交流損失の簡便な見積手法の確立が急務である。 REBCO超伝導線材は臨界電流特性が磁界印加角度依存性を持ち、さらに大きなアスペクト比による反磁界効果の影響で理論的に予測をすることが難しい。さらに、機器が使用される温度領域が従来の低温超伝導線材と比べて極めて広く、交流損失の温度依存性まで含めると、その設計のための見積りには膨大な時間と煩雑な手順を要する。本研究は、筆者らがすでに明らかにしたREBCO超伝導線材の垂直磁界中での交流損失についての温度スケーリング則を任意の磁界印加角度に拡張することによって、REBCO超伝導線材の広い温度、磁界・磁界印加角度領域における交流損失の簡便な見積法の確立を目指すものである。本年度は、人工ピンを導入したIBAD・PLD法線材(ハステロイテープ上にIon-Beam Assited Deposition法によりGd_3Zr_3O_7もしくはMgO中間層を形成し、その上にPulsed Laser Deposition法によりさらに中間層であるCeO_2層とREBCO超伝導層を作製した線材)について、臨界電流、磁化、交流損失を評価し、温度スケーリング則が成立することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初計画通りに、各種REBCO超伝導線材の臨界電流、磁化、交流損失を実測により評価し、温度スケーリング則が成立することを確認しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、幅広い温度・磁界・磁界印加角度領域におけるREBCO超伝導線材の臨界電流、磁化、交流損失の評価を行い、いずれについても温度スケーリング則が成立することを明らかにしつつある。これらの結果を基に、任意の温度、磁界、磁界印加角度における交流損失見積手法の簡便な手順を考案し、交流損失見積法の確立を目指す。磁界印加角度に関しては、磁化、交流損失が減少するREBCO超伝導線材に特有の新現象を発見したことに関連して、温度スケーリング則が成立しない条件もあるが、これは交流損失を過大評価をする方向であり、超伝導システム設計という観点では安全サイドの見積であり、大きな問題ではないと考えている。新現象まで考慮した交流損失の見積手法の確立は、まず新現象の発現機構の解明等多くの課題を解決する必要があり、次期の研究課題とする。
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