2011 Fiscal Year Annual Research Report
磁界と温度の2つのリスク要因を分離配置した超伝導コイルの熱電磁特性評価と最適設計
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22360120
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
住吉 文夫 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科(工学系), 教授 (20136526)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川越 明史 鹿児島大学, 大学院・理工学研究科, 助教 (40315396)
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Keywords | 超伝導 / コイル / 線材 / 導体 / 損失 / 電磁特性 / 健全性 / 診断 |
Research Abstract |
超伝導コイルの性能を向上させるために,磁界最大点と温度最高点を分離するコイル設計法を提案している。このために高い断面アスペクト比をもつテープ線材を活用する。 平成23年度は,臨界電流の格段の向上と交流損失の大幅な低減効果が確認されているMgB_2テープ線材について,この線材を使用した積層転位導体の電磁特性を測定した。安定して作製できるアスペクト比2のテープ線5本を使って,積層転位導体を試作し,液体ヘリウム温度における素線間結合損失の測定と数値解析を行なった。その結果,従来のNbTi/Cu丸線を使用して作製されたラザフォードケーブルと同程度の素線間接触抵抗であることを明らかにした。 また,高い断面アスペクト比のテープ線の電磁特性を詳細に測定するために用いるポインチングベクトル測定装置について,短尺直線形状試料用とコイル形状試料用の両方の測定装置の改良を進めた。交流外部磁界印加時,同時掃引時(交流外部磁界と交流電流通電の同時印加)のそれぞれについて,Bi-2223多芯テープ線材の電磁特性を測定し,本測定装置の有効性を明らかにした。さらに,高温超伝導コイルの健全性を保冷容器外側の室温空間から診断できる画期的な測定法が,超伝導変圧器の運転監視装置としても有用であることを示した。 高い断面アスペクト比のテープ線材で巻線したコイルでは,テープ面幅広面に垂直な変動磁界が印加されると大きな損失が発生する。この課題に対し,垂直磁界の変動分だけを選択的に抑制する付加コイルを設置する新しい損失低減方法を提案し,その効果を理論的に示した。またBi-2223多芯テープ線を使用した予備実験を行い,この損失低減方法の有効性を示した。さらに,RE系線材における縦磁界効果が,コイル応用に有効かどうかを理論的に検討し,現在の特性では,大きな効果は見込めないことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高アスペクト比断面のテープ線を活用するために必要な、テープ線とデープ線を導体にした場合の基礎電磁特性の把握が進んだ。また、より詳細なデータ取得のための実験装置の整備も完了した。さらに、コイルの最適設計法の指針も得られ、高性能コイルの基礎的な実証試験に向けた予備実験も完了した。以上の点から、「おおむね順調に進展している。」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、実験と理論計算を並行して進め、テープ線の基礎特性を定量的に把握し、高性能コイル設計のための基礎データを得る。特に、当初の研究計画通り、電磁特性のみならず、熱的な点まで考慮に入れた熱電磁特性という観点から検討を進める。また、テープ線で巻線した高性能コイルの最適設計法の有効性を確かめるために、小型のコイルを作製して、それらの熱電磁特性を測定し、本研究で提案しているコイル設計法の有効性を示す。
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