2011 Fiscal Year Annual Research Report
高起電力有機薄膜太陽電池のための新奇ナノ材料開発と構造制御
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22360123
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
伊東 栄次 信州大学, 工学部, 准教授 (50303441)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 和親 信州大学, 総合工学系研究科, 教授 (70160497)
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Keywords | 有機薄膜太陽電池 / 高起電力化 / ドナー分子 / フラーレン / ナノシート / 自己組織化単分子膜 / 酸化チタン / 液晶半導体 |
Research Abstract |
本年度も引き続きp型有機半導体(ドナー分子)のHOMO準位とn型半導体(アクセプタ分子)のLUMO準位に着目して界面のエネルギーギャップに相等するΔEを材料の組み合わせにより変えて作製した有機薄膜太陽電池の起電力向上と変換効率の増加に着目した研究を進めた。蒸着型の太陽電池ではドナー材料にポルフィリン系材料からDBPやAlClPcといった平面型のπ共役系低分子であり、なおかつ可視光領域に広範な吸収と起電力に有利と考えられるイオン化ポテンシャルが大きな材料に着目した性能を評価した。DBPをドナー分子とすることで起電力については室温で0.9V程度の電圧が得られ,効率も2.7%が得られた。低温では1.2Vを超える素子も得られた。なお,これらの平面型の分子は分子面が基板に平行に堆積すると吸収係数と厚さ方向のキャリア輸送性が向上し有利であることから,基板表面を自己組織化単分子膜で修飾し分子配向制御を試みた。しかし,単分子膜と基板間に電位障壁が形成され効率が低下したため,透明電極上にNiOを形成しその上に同様の素子を作製したところキャリア選択性が改善し効率が増加した。 また,H22年度に検討開始した酸化チタンナノシートを有する有機薄膜太陽電池において素子構造を見直し,電極界面の改善を行なった結果,昨年は1.8%程度であった効率を3%以上に改善することに成功した。さらなる効率向上にはn型のフラーレンの見直しも必要と考え,よりLUMO準位が高い位置にあるフラーレン系材料に着目した研究も開始し起電力向上が可能であることを実験的に確認した。 液晶半導体を用いた有機新材料に関しては基板の表面処理や製膜時の温度や加圧等により分子配向の制御や薄膜形成を試み知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
起電力化に向けた知見と成果は得られた他,ナノシートを用いた新規構造において効率を大きく改善できたことで本研究の最大の目標は達成しつつあると考えている。一方,研究を進行する中で分子の配向制御が新たな課題として浮き上がった。本研究の計画当初からこの課題を液晶半導体により実現することを目標としていたが,液晶半導体の合成と均一な薄膜化が当初予定していたよりも困難であったため配向制御までは到達できていない。薄膜化の知見が得られたことでこの分の今後遅れを挽回したい。以上より、全体としてはおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
分子配向制御と高起電力化はそれぞれ,分辛の形状やπ共役構造と,吸収波長帯(エネルギーギャップ)とイオン化ポテンシャル等に大きく依存する。これらを同時に満たす分子を新規開発することはそれだけで-大プロジェクトとなることが,最近の世界的な研究の中で顕在化しつつある。そのため,液晶半導体について引き続き研究を進める一方で,同時に液晶半導体と形状が類似しているが高起電力化が期待できる平板状の有機分子に着目し,これと自己組織化膜とを組み合わせて別の視点から分子配向制御による高性能化を進めていく必要がある。
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Research Products
(15 results)