2011 Fiscal Year Annual Research Report
シングルコア光ファイバの限界を打ち破るマルチコアファイバ技術の基盤形成
Project/Area Number |
22360134
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小柴 正則 北海道大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (40101521)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊滕 普聖 北海道大学, 大学院・情報科学研究科, 准教授 (20333627)
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Keywords | 光ファイバ / マルチコア光ファイバ / 空間分割多重 / クロストーク / モード結合理論 / パワー結合理論 / 有限要素法 |
Research Abstract |
マルチコアファイバの最も重要な課題はコア間クロストーク(以下クロストークという)の低減であり、平成22年度において、モード結合理論、パワー結合理論に基づくマルチコアファイバのクロストーク評価法を新たに開発した。特に、パワー結合理論を導入することによって、クロストークがファイバ長とともに増大する実験事実を理論的に初めて説明することに成功した(IEICE Transactions on Communications, vol.E94-B, pp.409-416, Feb.2011)。ところが、クロストークの絶対量には、理論と実験とで、およそ10dB前後の相違があり(IEICE Electronics Express, vol.8, pp.385-390, Mar.2011)、平成23年度においては、理論の精密化に全力を挙げた。具体的には、実際に測定に供されるマルチコアファイバでは、曲げやねじれが存在し、これが理論と実験との相違の主たる要因であるとの認識のもとに、モード結合理論、パワー結合理論のいずれにも曲げとねじれの影響を新たに組み入れた。モード結合理論においては、曲げやねじれのランダムな変動を考慮するため、相関長に対応するファイバ長ごとにランダムな位相オフセットを与える計算アルゴリズムを開発した。一方、パワー結合理論においては、コア間の結合に対して指数型、ガウス型、三角型の自己相関関数を新たに導入し、そのフーリエ変換であるパワースペクトル密度を用いてパワー結合係数を閉じた形で導出することに成功した。このように曲げとねじれの影響を組み入れることによって、絶対量まで含めてクロストークを正確に見積もることが可能になった(Optics Express, vol.19, pp.B102-B111, Dec.2011)。さらに、ここで開発した理論を駆使して、クロストークの低減化に有効なトレンチ型マルチコアファイバを設計、試作し、伝送距離100kmでクロストーク-30dB以下の7コアマルチコアファイバ(Optics Express, vol.19, pp.B543-B550, Dec.2012)、10コアマルチコアファイバ(Optics Letters, vol.36, pp.4626-4628、Dec.2012)を開発することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
マルチコアファイバのクロストークがファイバ長とともに増大する現象は、本研究によって初めて見出されたものであり、こうした新規現象を理論的に説明することにも初めて成功したが、こうした成果は当初予想していなかったことで、日米欧で競争が激化しているこの分野で大きなインパクトを与えることができた。さらに、トレンチを付加することによってクロストークを大幅に低減化したマルチコアファイバを実現することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、マルチコアファイバによる空間多重伝送に関する研究は、本研究の計画段階では考えられなかったほどに急速に進展している。この分野における我が国のプレゼンスは極めて高く、世界をリードしているが、欧米の追随も激しく、予断を許さない状況にある。本研究では、マルチコアファイバの実用化も念頭に入れて、ケーブル化や敷設を想定した高性能マルチコアファイバの開発を推進する。具体的には、機械的強度を保証できるクラッド径の最大寸法、過剰損失を増加させないクラッド厚(最外周コアからクラッド境界までの距離)の最小寸法、内側コアのカットオフ波長の長波長化防止法等を明らかにしたうえで、コア密度を最大化できる最適なコア配置を特定するとともに、クロストークのなお一層の低減化を追求する。
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