2011 Fiscal Year Annual Research Report
境界層高度を用いた都市接地層乱流のスケーリング則に関する研究
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22360198
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
森脇 亮 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (10302952)
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Keywords | 境界層 / 乱流 / 相似則 / フラックス / ヒートアイランド |
Research Abstract |
超音波風速計による地上の乱流計測とシーロメータによる大気境界層計測を同期させることにより,境界層局さを用いた都市接地境界層乱流の新たなスケーリング則(相似則)を提案することを目的として研究を遂行している.平成23年度は,シーロメーターの移動観測結果と都市・郊外での熱収支データを用いて,雲底高度と土地利用の関係について検討した.両エリアで雲の観測を行うことができた計15ケースのうち,雲底高度が都市域で高くなっていたものが4ケース,雲底高度が両エリアでほぼ一定だったものが3ケース,雲の分布が不規則だったものが8ケースであった.雲底高度が都市域で高くなっていたケースに見られる気象要素の特徴について検討した結果,(1)気温が郊外域よりも都市域で高い,(2)相対湿度が郊外域よりも都市域で低い,(3)風向が東西寄りであるという3つの条件を満たすことが分かった.逆にこれらを満たしていない場合,両エリア間の雲底高度に明確な関係性は見受けられなかった.松山平野では土地利用が南北で明瞭に異なっており,風向が東西方向である場合,風は都市域と郊外域の境界に沿って吹くために,地表付近の気象要素の差異は大気境界層上部まで保持され,結果として都市域で発生する雲は高くなる傾向があると考えられる.一方,都市と郊外の日射量を比較したところ,都市域のみで顕著な日射量の減少が見られる日が多くなる傾向が確認された.このことは都市の方が郊外よりも雲が発生・発達しやすいことが示唆している.熱収支観測で得られた顕熱フラックスから混合層の発達高度を推定したところ,都市域では地表からの顕熱の供給によって対流が活発であるため混合層もより高く発達する.そのため地表の空気はLCLを超えて持ち上げられ雲が発生する.一方郊外域では,顕熱が小さく混合層の発達は小さいため,地表の空気はLCLに達せず雲が発生しにくいと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒートアイランド・集中豪雨など都市が大気に及ぼす現象を定量的に予測するには,現象の引き金となる都市一大気間の乱流輸送過程,および都市上空の大気境界層の性質の把握が重要である.本研究では,都市と郊外(水田)における地表面フラックス,および,大気境界層高度のモニタリングを同時に行うことで,境界層高さが地表付近の乱流輸送過程に与える影響を解明し,境界層高さを用いた都市接地境界層乱流の新たなスケーリング則(相似則)を提案することを目的としている.本年度の研究によって,地表面フラックスの差異が境界層高さに影響を与えることが明らかとなり,境界層高さを用いた境界層乱流のスケーリングに筋道が着いたと考えらえる.
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Strategy for Future Research Activity |
大気境界層と地表面フラックスの相互作用の物理過程をもとにして,境界層高さをパラメータとした都市接地層乱流の新たなスケーリング則(相似則)を提案する.そして,本研究で得られる新たな相似則が都市-大気間の熱・水収支の予測に及ぼす影響を定量的に明らかにする.
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