Research Abstract |
本研究は,高齢化・過疎化の著しい中山間地の農村を対象に,歴史的構造物や文化的景観を含む土木遺産を基盤とした,地域コミュニティと基礎自治体め協働による持続可能な観光支援システムを構築することを目的とする.そのために,地方分権により既存の道路ネットワークと農村の持つ利点を活かした観光支援政策,事業の先進地であるフランスはオーベルニュ地方に範を求め,同地と地理的・歴史的に共通点を多く有する国内の中山間地域の農村を事例として,日仏の事例分析を行う.さらに,フランスにおける現地事例調査,国内における実践的地域づくり活動を通して,農村観光支援のための政策,人材育成,道路ネットワークの活用手法を提案する. 平成23年度は,フランス,熊本県山都町,鹿児島県伊佐市において,研究の進展を図った.まずフランスからAndre GUILLERM氏を招き,熊本県下における文化的景観保全地域の現地踏査を行うとともに,海外事例との比較調査を実施した.さらにフランスにおける景域保全計画策定への地域住民参画について,Cyrille MARLIN氏らとの共同研究体制のもと,新たに調査・分析した.またヒアリングや現地踏査により,シット制度に関する補足調査も行った.熊本県山都町においては,GUILLBRM氏,行政,地域住民らとともに国内外の文化的景観保全を考えるワークショップを開催し,当該地域の人々に対する意識啓発や保全の在り方を議論した.また熊本県下の他の文化的景観保全の取り組みも含め,文化的景観と地域マネジメントとの関係を問うシンポジウムを開催し,行政職員・コンサルタント・研究者・学生らとの議論を深めた.鹿児島県伊佐市では,行政・住民らに対し,土木遺産や地域資源を活用した地域内交流の支援を行うことにより,曽木の滝を中心とした農村観光の実践的検討(ウォーキングイベント試行)を行った.さらに当該地域で観光ボランティアガイド導入の支援を行い,地域内外の交流促進に資する視点・手法の提供を行うとともに,引き続き導入後の動向を観察している段階である.以上の成果は適宜,国内の学術会議にて公表した. 最終年度となる平成24年度はこれらの調査・分析成果を国内の学術会議等で公表するとともに,パリで開催される国際会議(4th International Congress on Construction History)での公表も予定している.またこれまでの事例収集,調査・分析内容を受け,日仏の農村が抱える共通の問題点を洗い出すとともに,観光まちづくりの進展に寄与する観光支援システムの考案を試みる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内では熊本県・鹿児島県下の農村において,基礎自治体や地域コミュニティ等と協働により,ワークショップやイベント開催といった実践的地域づくり活動を実施している.地域では人材等の地域ネットワーク構築が見られるなど,着実な成果が見られる.さらにそれらの成果は適宜,学術研究発表会等で公表し,研究の進展を図っている.またフランスにおける調査も計画通り実施するとともに,フランスより研究者を招聘し,国内事例の調査や意見交換を行うなど,研究はおおむね順調に進展している.
|
Strategy for Future Research Activity |
日仏における現地事例調査や実践的地域づくり活動を受け,農村観光支援システムの構築に向けた取り組みを実施する.具体的には,これまで研究対象としてきた熊本県及び鹿児島県下の農村において,行政,地域住民,コンサルタント等様々な主体を交え,持続可能な観光支援システムに関する実務的な検討会を開催するとともに,地域住民,行政に対する意見聴取などを行う.これらの成果や追加調査を踏まえ,日仏事例の分析を進めるとともに,国内外の交流を基盤とした,農村観光支援,景観保全,地域再生に関する研究を発展させる所存である.
|