2011 Fiscal Year Annual Research Report
通風気流予測における領域分割法を用いた住宅室内気流構造と体感冷却効果の解明
Project/Area Number |
22360241
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
倉渕 隆 東京理科大学, 工学部, 教授 (70178094)
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Keywords | 自然通風 / 風速比 / CFD解析 / 風洞実験 / 開口部 / STAR-CD / OpenFOAM / 乱流モデル |
Research Abstract |
住宅における自然通風の有効利用のためには、室内気流速度を高めるのに効果的な開口部の配置が、設計段階で計画されることが望ましい。しかし、通風時の室内気流構造は屋外風のみならず、開口部配置、開口部面積、周辺建物状況など様々な要因の影響を受けると考えられ、設計の最適化は容易ではない。このような背景に対し、既往研究では「風速比」というパラメータを定義し、宇田川の住宅用標準問題を基に、模型を用いた風洞実験及び数値シミュレーション(CFD)による検討を行うことでその有効性が確認されている。そこで昨年度では、風速比の広範な適用に向け、実際の市街地に建つ住宅モデルにおけるCFD解析を行い、実測結果との比較によりその整合性を確認すると同時に、既往研究において示された風速比の知見が同様に適用可能であるかの検討を行った。またその上で、設計段階においてより実用的な、定量的通風性能評価手法を示すことを目的として研究を行った。その結果、1)実住宅モデルにおいても、風速比は風向角の影響を受けず、開口配置により概ね一意に決まる。2)風速比は流入開口率が大きいほど、流入開口数が多いほど大きくなる傾向にある。3)風速比は周辺市街地の有無に影響を受けない、などの結果を得た。また、上記までの研究はSTAR-CDと呼ぶCFDを用いてきたが、OpenFOAMと呼ぶCFDコードを用い、これらのコードの風圧係数・通風気流性状予測の観点から、各種乱流モデル・CFDコードの特徴を把握することを行った。その結果、CFDを通風気流予測に適用する場合の流入プロファイルの保存の重要性と、各種乱流モデルを風圧係数予測・通風現象予測に適用した際の得失が把握された。全般的には、SSTk-ωモデルは、他の乱流モデルに比べ問題となる欠点が少なく、風圧予測・通風現象予測に適した乱流モデルである事がわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
周辺建物の有無や、市街地に建つ住宅など様々な条件下でも、風速比により開口部配置を変動要因とした通風性能を定量的に評価することの可能性を示し、この成果は通風時の居住域風速の予測及び温熱環境予測への応用も期待できるという点で、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において生じた課題は、天窓を設けた場合にCFD予測精度が大幅に悪化することである。特に居住域平均風速を過大に評価する傾向にあるため、結果として風速比が1を超えるケースが頻出した。この予測精度を改善することで、より実態に近い評価がCFDにより可能になるものと考えられる。また、同一の建物に関しての検討を通して行ったため、他の地域、他の市街地においても本論文で得られた知見が適用できるかは未確認である。さらに、建物がより密集して建つ、通風を得られにくいと考えられる地域においても同様の傾向が見られるかなどの検討を今後行っていく予定である。
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Research Products
(5 results)