2012 Fiscal Year Annual Research Report
近代中国における日本人住宅地の形成過程とその特質に関する実証的研究
Project/Area Number |
22360261
|
Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
大場 修 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (20137128)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
包 慕萍 東京大学, 生産技術研究所, 研究員 (40536827)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 満洲 / 日本人住宅地 / 近代住宅史 / 満鉄 / 新屯 / 撫順 / 瀋陽 / 附属地 |
Research Abstract |
本年度は,満洲における日本人住宅地についての文献を網羅的に収集し、あわせて撫順市新屯街区において日本人用の炭坑住宅の実例について、現地調査を実施した。文献については、南満洲鉄道株式会社の社史、社報、満洲の日本語新聞や満洲に滞在した日本人の回想録などの日本語史料を入手した。中国語文献の調査のため遼寧省档案館にも行ったが、2012年から館内での文献コピーや写真撮影が一切不可となり調査は難航したが、日本人住宅地に関する文献を若干見いだした。これらにより満洲における日本人住宅地の形成過程を通史的に解明する目処がついた。 現地調査は、瀋陽市と撫順市で実施した。具体的には、戦前アジア最大の炭鉱都市と称される撫順市の新屯街区にて、1920年代から終戦まで建設された旧日本人街を発見し、町の形成及び住宅類型を調べた。 撫順市の満鉄社宅街である千金寨や永安台の日本人住宅に関しては、文献記録が残されているものの、現地には建物が全く残されていないことも確認した。ゆえに、新屯街区における現存する住宅遺構調査の重要性がきわめて高いことが確認できたため、同地区では、日本人住宅の間取や住棟構成を明らかにすることに留まらず、建築構造やディテールまで踏み込んだ、可能な限りの詳細な調査を実施した。 旧日本人用社宅街は住宅階級制の特甲、甲、乙、丙、丁の五種類により構成されたことも確認したが、撫順市新屯街区の住宅は炭坑開発と一体的に建設され、炭坑関連の仕事に従事する満鉄社員すなわち中、下級職員用の住宅が主であるため、集合住宅が多いという特徴がみられた。 しかし、既往の中国近代住宅史研究では戸建て住宅のみが報告され、戦前期の集合住宅の類いは未だ殆ど研究されていない。従って、今回の新屯地区における炭坑住宅の実例は、中国近代住宅史の構築に貢献できる成果であり、今後は日本の炭鉱社宅街との比較研究も重要な視点となる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は現地調査(撫順市新屯地区)と、南満洲鉄道株式会社の社史(10年史から40年史の4冊)など関係する文献資料の網羅的調査により、現地調査と文献資料の両面から、当時の中国東北部における日本人住宅地の建設過程を検討して、5種類の満鉄社宅のプランを実測することができた。 特に、今回の現地調査に依り、戦前期この種の日本人用炭鉱住宅の遺構の残存が確認できたこと、また、その住宅地構成や住棟、住戸の平面構成、設備、意匠等の状況を実地調査により確認し、図化できたことは大きな成果であった。 その意味で、24年度は、満州における近代住宅史あるいは日本の近代住宅史研究の進展に寄与し得る史料的価値の高い調査成果が得られたと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の現地調査では、本年度と同様に、中国の東北大学、瀋陽建築大学の研究協力者と合同で住宅調査や聞き取り調査を引き続き行い、当該地域に現存する満鉄社宅の建物を詳細に記録する予定である。 また、実測データと文献を合わせて、満鉄社宅のプランの類型、住棟構成、町の建設過程などを総括的に把握したい。その上で、本研究の成果を締めくくるべく、審査論文に取り纏める予定である。
|
Research Products
(6 results)