2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22360265
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
谷山 智康 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 准教授 (10302960)
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Keywords | スピンエレクトロニクス / 磁性 / 先端機能デバイス |
Research Abstract |
平成23年度には、Feドット/GaAsヘテロ構造をマグネトロンスパッタリング法により作製し、作製した試料に対して円偏光を照射することでスピン偏極電子をGaAs中に励起し、励起したスピン偏極電子を介したFeドット間のスピン相関の変化に起因する保磁力の変調効果の可能性について調査した。具体的には、室温において小さな保磁力(数Oe)を有するFeドット(公称膜厚0.6-0.7nm相当)/GaAsヘテロ構造に対して、波長830nm、CW出力80mWの円偏光を照射した際の保磁力の変化を、現有の磁気光学Kerr効果測定装置を用いて計測した。プローブ光強度は約5mWである。その結果、円偏光照射時において約20%程度の保磁力の増大が観測された。また、円偏光を照射した際に接合界面を流れる光電流が照射光の強度と伴に単調に増加することが確認された。以上の結果から、Feドット/GaAsヘテロ構造に対して、円偏光照射により生成されたスピン偏極電子がFeドットの保磁力を変調させる効果をもつことが示唆された。一方、照射円偏光の強度を120mWにした際には、逆に保磁力が減少する傾向も観測された。この結果は、照射光の強度の増大に伴う発熱による温度上昇の効果として解釈されうる。すなわち、円偏光照射による保磁力への影響は、スピン偏極電子を介したスピン相関の変調に起因する効果と温度上昇による効果の双方が相乗した結果として現れると理解される。そのため、保磁力に対するスピン偏極電子の影響を明確化するためには、それぞれを独立に区別して計測するための工夫が必要であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度交付申請書に記載の実施計画をおおむね完了しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の研究実績に示した通り、円偏光照射の効果には本来期待していた効果に加え、発熱による効果が相乗することが明らかとなった。そのため、この発熱による温度上昇の効果を区別する手法を考案し、最終目標であるスピン偏極した電子系が強磁性ドット間のスピン相関に及ぼす影響について明確化することを目指す。
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