2011 Fiscal Year Annual Research Report
量子切断効果を利用した近赤外応力発光体の開発とその物性解明
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22360296
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山田 浩志 独立行政法人産業技術総合研究所, 生産計測技術研究センター, 主任研究員 (90415761)
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Keywords | 応力発光体 / セラミックス / 光物性 / センサ |
Research Abstract |
本研究の目的は、量子切断効果を利用して既存もしくは新規の応力発光体の発光波長を紫外・可視光から近赤外光へ波長変換(ダウンコンバージョン)することにより、近赤外発光を有する新しい応力発光体を実現させること、およびその発光機構を解明することにある。 昨年度は、材料開発と近赤外応力発光・蛍光特性の評価装置の開発に力点をおいて研究を進め、SrAl2O4:EuにアクセプターとしてErを共添加することにより、発光波長1550nmを示す応力発光体の開発に成功しダウンコンバージョン効果の有効性を実証した。本年度は昨年度の結果をさらに進めるため、近赤外発光強度の向上とそのエネルギー伝搬メカニズムの解明に取り組んだ。 近赤外応力発光強度の改善のため、応力発光母体材料(ドナー)とアクセプターの組み合わせを再検討した。これはドナーであるEuからアクセプターであるErへのエネルギー遷移確率が小さいことに起因して近赤外発光強度が上がらないと考えたからである。ドナー・アクセプター間のエネルギー遷移はフェルスター機構により起こるので、(1)ドナー発光とアクセプター吸収のスペクトルマッチング、(2)アクセプター吸収の遷移確率が重要となってくる。そこでドナーイオンとして4f-5d許容遷移を有するEu2+、アクセプターイオンとして青色領域に大きな吸収バンドを有するCr3+を選択し、既存の応力発光母体の中から高強度青色応力発光体として最近開発したSrMg2(PO4)2:Eu2+を選択した。それぞれの添加量を最適化した結果、近赤外発光強度はフォトン数で換算して約30倍以上に増大させることに成功した。また第一原理計算によるエネルギー状態計算から、母体中に添加されたEu2+の基底状態(4f state)は、価電子帯の約1.7eV上にあり、これまでの応力発光モデルと整合する結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度検証したダウンコンバージョンを利用した近赤外発光強度をさらに向上させることに成功し、また第一原理計算により応力発光モデルの構築に係る重要な知見が得られ、おおむね計画通り進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ドナー発光の蛍光寿命測定からエネルギー共鳴伝達の定量的な評価を行い、最終的には量子切断効果の検証を行う。これまでの応力発光モデルを援用し各データとの整合性を検討して、応力発光プロセスにおけるエネルギー伝達プロセスを明らかにする。
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Research Products
(16 results)