2011 Fiscal Year Annual Research Report
加速器を用いた光子誘起陽電子消滅法による非破壊材料評価法の開発
Project/Area Number |
22360297
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
豊川 弘之 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 研究グループ長 (80357582)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榊 浩司 独立行政法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 研究員 (20392615)
|
Keywords | 電子陽電子対生成 / 電子加速器 / 電子蓄積リング / 水素吸蔵 / 水素脆性 / 陽電子消滅法 / Sパラメータ / 陽電子寿命測定 |
Research Abstract |
当年度は、陽電子寿命測定(PALS)を行うシステムを構築し、本手法によって寿命測定を行うことに成功した。産総研の加速器が震災で長期間故障したため、愛知県岡崎市にある分子科学研究所の電子蓄積リングUVSOR-IIを用いて実験を行った。同装置にはパルス幅が数フェムト秒のチタンサファイアレーザーが備えてあり、同レーザーを用いたレーザーコンプトン散乱によってパルス幅5ピコ秒、エネルギーが約6MeVの超短パルスガンマ線を発生できるビームラインがある。同ガンマ線を厚さ5cmの鉛ブロック試料に照射することで試料内部で電子・陽電子対を生成し、生成した陽電子が周囲の電子と再結合して511keVの消滅ガンマ線が発生し、これを試料に隣接して設置したBaF2シンチレータによって検出した。陽電子消滅ガンマ線の信号波形を高速のデジタルオシロスコープによってデジタイズし、チタンサファイアレーザーの繰り返し周波数(1kHz)と電子蓄積リングの高周波信号(90MHz)をオシロスコープのトリガーとして用いることで、十分に時間分解能の良い寿命測定を行った。実験から得られた鉛の陽電子寿命は190ピコ秒であった。なお、震災で故障した産総研の電子加速器は、関係者の協力のもとに鋭意復旧作業を行った結果、最終的に電子蓄積に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
東日本大震災によって産総研の電子加速器に大きな被害があり、装置の復旧作業に多大な時間を割いたため、本研究の進捗状況は当初の計画に比してやや遅れている。しかし、分子研の装置を用いて陽電子寿命測定に成功したことなどから、当初予定していた研究目標は最終的に達成できるものと思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本手法の特徴は、試料深部における陽電子寿命測定をその場で行うことにあるため、水素吸蔵合金や応力の蓄積等を非破壊で可視化することが目標となる。今後は実用化を目指した研究を行うこととする。また、超短パルスガンマ線を高い繰り返し周波数で発生する装置が、国内では非常に少ないことから、同装置の開発および汎用化・小型化を行い、本手法の普及と関連する研究テーマの拡大を目指す。
|
Research Products
(5 results)