2011 Fiscal Year Annual Research Report
有機溶媒電気化学プロセスによる自己組織化ポーラス層創成とその工学応用
Project/Area Number |
22360307
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
土谷 博昭 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (50432513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 愼司 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (70199371)
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Keywords | ステンレス鋼 / インコネル合金 / コバルト・クロム合金 / チタン / 電気化学プロセス / ナノポーラス / 有機溶媒 / 生体適合性 |
Research Abstract |
本年度は有機溶媒電気化学プロセスによるステンレス鋼表面のナノポーラス化の際に有機溶媒中に含まれる水分の影響や材料組織の影響、その他の金属・合金への適用性ならびに表面ポーラス化したステンレス鋼の生体適合性評価を行った。ステンレス鋼表面ポーラス化は過塩素酸を加えたエチレングリコール中での電解処理により行われるが、その際に有機溶媒に水分を加えなかった場合にはポアはほとんど成長しなかった。極微量の水分を加えた場合、ポア形成速度は著しく増大した。しかし水分を添加しすぎた場合には電解処理を安定して行えなかった。過塩素酸を加えたエチレングリコール中での電解処理によりインコネル合金表面にもステンレス鋼と同様にナノポーラス構造が形成した。一方、同溶液中での電解処理ではコバルト・クロム合金はナノポーラス化しなかった。また、バナジウムに関しても検討を行い、フッ酸および硫酸を含むエチレングリコールもしくはグリセリン中での電解処理により直径が数十nmのポアが試料表面全体に形成し、その直径は電解電圧に比例して増大すること、また電解開始直後に急激に増大したのちほぼ一定となり、ステンレス鋼表面のポーラス化と同様の挙動を示すことが分かった。表面ポーラス化したステンレス鋼の生体適合性を評価するため、生体用金属材料として使用されるSUS316ステンレス鋼表面に電解処理により平均ポア径を約25nmから175nmの範囲で変化させたポーラス構造を形成し、その表面にマウス頭蓋揖由来骨芽細胞様細胞を播種し細胞増殖挙動ならびにAPL活性測定を行った結果、細胞増殖挙動についてはポア径の影響は見られず、ざらに表面ポーラス化していない試料とも同様の増殖挙動を示し、表面ポーラス化の効果は見られなかった。一方、ALP活性については、ポア径の影響が見られ、直径が約25nmのポアを形成した試料で最も高い活性を示し、表面ポーラス化の効果が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はステンレス鋼表面のナノポーラス化に及ぼす有機溶媒に含まれる水分の影響、材料組織など材料因子の影響を検討し、さらにステンレス鋼以外の金属表面のナノポーラス化としてバナジウムについて検討しバナジウム表面でも電気化学条件を最適化することにより表面ポーラス化可能であることを示した。またナノポーラス化したステンレス鋼表面の生体適合性評価も行った。このように本年度計画した項目をほぼ実施することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
有機溶媒電気化学プロセスによる金属基板表面ポーラス化挙動のさらなる理解のため、基板の影響についてはさらなる調査が必要である。よって、本年度ポーラス化できなかったコバルト・クロム合金を、電解条件を変えてポーラス化の可否を検討し、さらにクロムを含まない合金として鉄・ニッケル合金などを、さらに銅、亜鉛、錫など純金属を対象にした研究も行う。また、表面ポーラス化したステンレス鋼の生体適合性評価、マイクロ・ナノパターニングによる細胞配列・遊走方向制御に関する検討を加えるとともに、機能性電極としての評価も行う。
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Research Products
(10 results)