2011 Fiscal Year Annual Research Report
太陽電池用Siの溶媒を用いた低温凝固精製プロセスの物理化学
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22360312
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森田 一樹 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00210170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 健 東京大学, 環境安全研究センター, 准教授 (90435933)
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Keywords | 溶融・凝固 / 太陽電池シリコン / 低温凝固精製 / 銅 / スズ |
Research Abstract |
Si結晶の低温凝固精製プロセスにおいて前年度のSi-Al融液に代わる溶媒として、低温の共晶点(1075 K) を有するCu-Si系溶媒に着目した。実験は、Cu-53at%Si合金を温度勾配下で一方向凝固させ行い、Cu-Si合金の一方向凝固によってバルク状Siの成長が得られる最適な条件を調査するとともに、低温凝固による精錬効果の検討を行った。 温度勾配2.98~3.94K/mm、降下速度0.02~0.08mm/minの全ての試料において坩堝底部に平滑な界面を有するバルク状Siが確認された。同じ温度勾配の条件では、降下速度が小さくなるほど坩堝底部から成長するバルク状Siの析出量が増加する傾向にあった。また、Si結晶の成長速度について検討を行った結果、底部に成長したバルク状Siの鉛直方向の厚みと凝固時間から求めた平均の成長速度と温度勾配との間には正の相関があり、この結果から、Cu-Si融液からのバルク状Siの成長は拡散律速であることが示唆された。 温度勾配3.94K/mm、降下速度0.02mm/minの凝固条件で、MG-Siを合金の原料に用いて一方向凝固を行い、バルクSi結晶中の不純物濃度を調査した。MG-Siと精製後のSi結晶の不純物濃度をTable 1に示す。Si-Al溶媒から成長した結晶SiではFe、Tiは98%以上、Bは90%程度除去された[2]が、本実験での精錬後の結晶SiではFeは94.8%、Tiは92.6%除去されたものの、B、Al、Cuについては期待されたような精製効果がみられなかった。光学顕微鏡による高倍率での観察で、バルク状Siの坩堝界面近傍に微小な溶媒合金の取り込みが確認されており、不純物濃度が高値となったと考えられる。溶媒合金の取り込みの抑制手法、もしくは取り込まれた合金の分離手法を検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度まで、Siの低温凝固精製に適切であると考えられた2元系Si基合金系に対して溶媒の検討を拡張してきた。Si-Cu系に加えて、Siの融点近傍における液相線は勾配が緩慢で、降下温度あたりの結晶Siの高い収率が予想されるSi-Sn系では、引き下げによりバルク状Siの生成条件をほぼ明確にできたが、精製能力については、Si-Cu系の場合あ、Si-Al系に較べて高くなく、不十分であることが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度まで、Si-Sn系では引き下げによりバルク状Siの生成条件をほぼ明確にできたが、精製能力がSi-Cu系、Si-Al系に較べて低かったため、平成24年度は、より高い精製条件の可能性について検討を行う。Si-Sn系についてBの低温凝固精製の確認を行うとともに、組成(凝固温度)による最適化を検討するための基礎データとして、Si-Sn-B3元系融体の熱力学的性質を明らかにする。
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