2012 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロ粒子化・局所溶融化による211方位制御薄型シリコン太陽電池の創成
Project/Area Number |
22360315
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮原 広郁 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90264069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成田 一人 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50404017)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 結晶成長 / 太陽電池 / 多結晶シリコン / 一方向凝固 / 過冷度 / 相晶 / 界面エネルギー |
Research Abstract |
現在生産されている太陽電池のうち,多結晶シリコン(Si)を用いた製造法は低コスト化において有利な点が多く,太陽電池総生産量の約50%を占める発電産業の先導的役割を果たす材料である.しかし,高い発電効率及び高生産性向上のためには結晶学・冶金学的見地からのSiウエハ本体の更なる品質改善が求められている.一方,その生産工程において多結晶Siインゴットのウエハへ薄膜加工で生ずる研削粉処理について問題も指摘されている.これらの問題に対して本研究ではシリコン原料を有効に活用しながら,高発電効率を有する太陽電池モジュールの製造プロセス技術を見出すことを目的とし,本年はSi微粒子の結晶方位及びSiの異質核生成に及ぼす離型剤の影響について調査した. まず石英製基板に離型剤を塗布しその上部に9Nの高純度Si粉末を配置させ,アルゴン(Ar)雰囲気及び真空雰囲気において293K~1013Kまで加熱させた後,レーザ照射によりSiを溶融させた.その後,冷却させて高純度Si粒子を作製した.得られたSi粒子の大きさは照射条件,即ち室温~融点間の顕熱及び潜熱の総和に支配していることが明らかとなった.また,得られたSi粒子内部を構成する結晶の方位を解析したところ,結晶方位は周囲の保持温度即ち結晶成長の過冷度に大きく影響されることが明らかとなった.さらに実験環境にも左右され,雰囲気及び離型剤にも結晶方位が影響されることを見出した. そこで,溶融状態におけるSiの異質核生成挙動を調査するために,複数の結晶構造を有する窒化珪素粉末基盤を用いて溶融Siとの整合性を調査した.1687Kにおける基盤と溶融Siの濡れ性は用いた粉末の結晶構造に大きく依存して著しく変化した.このことより溶融Siの異質核生成は離型剤となる粉末の結晶構造差に基づく界面エントロピーひいては界面エネルギーに大きく影響されると考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Siインゴットを用いた太陽電池生産で最も問題となるのは,ウエハへ薄膜加工で生ずる研削粉処理である.原料となる高純度Si塊を切削加工することなく粒子状及び薄膜状モジュールとするためにはSi微粒子及び薄膜の核生成と結晶成長方位を制御する必要がある. 本年度最も評価できる点はこの核生成と結晶方位の制御が可能となる事を示唆した結果を多く得られたことである.特に核生成については,実験計画当初では異質核生成の制御物質としての離型剤はアルミナや石英等の粉末を予定していたが,これらの物質に加え,窒化珪素について種々の結晶構造の粉末を用いた実験を行ったところ,溶融状態からのSiの異質核生成に適する結晶構造と不適切な物質を見出したことにある.このことにより,核生成の場所を制御できることになり,ひいては結晶粒径も制御できる指針を見出したことになる. さらに,Siマイクロ粒子の製造条件が,潜熱等を考慮した冶金的知見と電気的知見から最適化できること,及びSi粒子内の結晶方位が雰囲気ガス,雰囲気温度,過冷度と関連性が高いことを見出したことも大きな成果といえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は目標達成のためのSiのマイクロ粒子化及び薄膜化の際の急速凝固において核生成及び結晶方位制御を行うと共に,これまでの大型試料との結晶成長機構と比較し,組織制御技術を確立することを計画している.特に核生成については,複数の結晶構造を有する窒化珪素粉末基盤を用いて溶融Siとの界面エネルギーを正確に評価することを目的としている. まず,マイクロ粒子が基盤上で溶融する際に表面張力の作用で球状となるので,窒化珪素製基板及びアルミナ製基板上にマイクロサイズSi粒子を配置し,既存の赤外線イメージ炉及び本補助金で購入したパルス波形制御レーザ溶接機により局所的にSi粒子を溶融させて溶融状態の形態変化を調査する.さらに基盤の結晶構造と溶融Siの濡れ性及び界面エネルギーとの関係を明確に,凝固後のマイクロ粒子組織との関連性を評価する.さらに,種々の結晶構造の窒化珪素粉末離型材を用い,溶融Si及び結晶Siとの界面における結晶整合性,過冷度測定,反応性等について評価する.一方,大型バルク試料の結晶成長に及ぼす離型剤の影響についても調査するため,一度,大型バルク試料に視点を戻す.中型の石英製ルツボにこれまでで得られた成果を基に異質核生成物質に適する窒化珪素を適正な場所に配置し,核生成場所を制御させたSiインゴットを作製する.成長の過零度を詳細に調査し,マイクロ粒子を得るための凝固条件の指針を得る. さらに,上記実験で得られる核生成に関する成果と急速凝固におけるエピタキシャル成長機構の解析を総合させ,マイクロサイズのSi粒子を塗布した窒化珪素製基板及びアルミナ製基板を種々の速度で移動させて一方向凝固を行い,粒子及び薄膜太陽電池を製造しうる昇温過程・恒温保持条件を見出し,Siのマイクロ粒子化・局所溶融化太陽電池の製造法を確立させる.
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