Research Abstract |
我々は,超臨界溶体急速膨張(RESS)法により得られる微粒子の粒径が,溶質溶解部と粒子生成部の間の過飽和度と線形性を有することを明らかにし,本結果に基づいた粒子設計法を提案した.この粒子設計法の妥当性の確認には超臨界二酸化炭素に対する薬物の溶解度が必要不可欠な知見となるため,信頼性の高い溶解度の測定が可能となる紫外可視分光法を利用した溶解度測定装置を新規に設計・製作し,超臨界二酸化炭素に対するイブプロフェンおよびテオフィリンの溶解度データを測定した.次に,RESS法による薬物の粒子設計技術の確立を目的として,生成粒子の形態・多形制御について検討した.具体的には,RS-(±)-イブプロフェン,テオフィリン,カフェイン及びバニリンをモデル物質として,種々の操作因子の微粒化への影響を検討した.RS-(±)-イブプロフェンは,操作条件に関わらず結晶構造は変化しないが,粒子回収部温度の上昇に伴い,球状から柱状および板状さらに針状へと結晶形態が変化していくことがわかった.カフェインとバニリンは,生成粒子の結晶形態は球状もしくはダンベル状であるが,微粒化前後で多形転移することがわかった.一方,テオフィリンの生成粒子は,結晶形態は球状もしくはダンベル状であり,結晶構造の変化は認められなかった.さらに,RESS法の汎用性の強化を目的として,超臨界二酸化炭素に対する低溶解物質への適用性を向上させるために,固体共溶媒を利用したRESS法の適用性を検討した.固体共溶媒としてL-メントールおよびバニリンを用い,固体共溶媒添加がテオフィリン粒子創製に与える影響を検討した.その結果,固体共溶媒としてL-メントールを用いた場合は,液相の出現により析出粒子の結晶形態の再現性が得られず不適当であることがわかった.一方,バニリンを添加した場合,通常のRESS法により創製された粒子よりも粒径が小さく球状の粒子が得られたことより微粒化に有用であることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超臨界溶体急速膨張(RESS)法による薬物の粒子創製装置および粒子設計法の汎用化においては,これまで6種類の薬物について操作因子の影響を詳細に検討し,その目的がほぼ計画通りに達成されている.しかし,RESS法による粒子創製メカニズムの解明について,実験的アプローチおよび理論的アプローチ(数値流体力学計算に核化・結晶成長現象を組み合わせた結晶成長モデルの構築)の進展が遅れている.また,超臨界二酸化炭素+薬物系の相平衡関係の蓄積については,当初の計画に従い,種々の薬物の超臨界二酸化炭素に対する溶解度の蓄積が順調に進んでいると判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,当初の研究計画の検討項目である「(1)超臨界溶体急速膨張法による薬物の粒子創製装置および粒子設計法の汎用化」および「(2)超臨界二酸化炭素+薬物系の相平衡関係(「超臨界二酸化炭素に対する薬物の溶解度」と「二酸化炭素+薬物系の気液固三相平衡関係」)の蓄積」について計画に従い進めていく.ただし,RESS法による粒子創製メカニズムの解明について,実験的アプローチおよび理論的アプローチの進展が遅れているため,特に重点的に進める.また,化学工学的立場から,装置の量産化や本技術のフィージビリティスタディを検討し,さらに本手法で得られる薬物粒子の品質,コスト,生産性,市場性なども同時に考慮することにより,本手法の実用化に向けた課題を明確にする検討を始める.さらに,本提案課題は本手法の実用化を狙ったものであるため,課題の明確化だけではなく,その課題に対する具体的な解決策も提示する.
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