2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト細胞の活性状態を規定する工学パラメータの策定と細胞寿命評価
Project/Area Number |
22360344
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田谷 正仁 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60144127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾島 由紘 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (20546957)
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Keywords | ヒト細胞 / 細胞寿命 / 酸化ストレス / 細胞活性 / 遺伝子発現 / 接着性ドメイン / 細胞面積 / 巨核球分化 |
Research Abstract |
1.生理活性物質を培養面に固定化する新規手法の開発 ヒト培養細胞の培養基材としての有用性が報告されている,フェノール性水酸基を導入したカルボキシメチルセルロース(CMC)のヒドロゲルを対象に選択した.微生物由来のセルロース結合モジュール(CBM)が,CMCヒドロゲルに特異的に吸着することを,タンパクモジュールとGFPの融合タンパク質を作成することで明らかにした.これらの結果はこれまでに報告のない新規性の高い内容として学会発表を行った.さらに,マウスの胚性幹細胞(ES細胞)の未分化維持(寿命の延長)に必須の生理活性物質であるleukemia inhibitory factor (LIF)とCBMの融合タンパク質を作成し,CMCヒドロゲル上に特異的に吸着させた培養面において,マウスES細胞の未分化維持培養を行い,細胞内的な評価として未分化に関与する遺伝子発現量の解析を行った. 2.細胞寿命や分化に関わる生理活性物質の探索 ヒト造血幹細胞のモデル細胞株であるK562細胞は,生理活性物質であるphorbol 12-mydstate13-acetate(PMA)を培地中への添加することで,細胞寿命の短縮とともに巨核球への分化が引き起こされる.巨核球分化では,本来浮遊系の細胞であるK562が培養面へと付着・伸展し,核内分裂が生じることで核と細胞質の巨大化が進行し,やがて細胞死に至る.本研究では,K562細胞のPMA分化の際に,代表的な酸化ストレス因子である過酸化水素を添加すると寿命の短縮と巨核球分化の促進が引き起こされ,内的指標である遺伝子発現レベルにおいて酸化ストレス応答が重要であることを明らかとした.以上の研究成果は,これまでに報告のない新規性の高い内容として学会発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの検討により,2011年度中にヒト角化細胞の寿命進行に伴う外的パラメータと内的パラメータの関係性をまとめた学術論文が「ヒト角化細胞の細胞寿命の進行に伴う細胞状態の評価指標」という題名で,印刷されている.また,生理活性物質をヒドロゲル平板に提示する新しい手法を開発し,国内学会発表を行った.さらに,細胞寿命の短縮と分化を同時に行うヒト細胞の巨核球分化に関しても予備的な検討を進めており,平成24年度中により詳細な解析を進める予定にしている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策として,より詳細な細胞外的評価を行うことを考えている.具体的には,これまで工学パラメータを算出するための細胞外的指標の評価には明視野の観察を中心に行ってきたが,今後は生細胞の蛍光タイムラプス観察を行うことで,細胞寿命の進行中に引き起こされる細胞内・外の両パラメータの変化を同時に解析し,分化との関連性を含め統一的な解釈を行う. 最終的には,これまでの検討により得られた結果を総合的にまとめ,ヒト細胞の活性状態を規定する新たな工学パラメータの提案へと展開していく予定にしている.
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