2012 Fiscal Year Annual Research Report
細胞包埋ゲル充填多孔質担体培養技術を用いた実用的肝組織工学技術の開発
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22360348
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井嶋 博之 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10274515)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 肝組織工学 / 再生医工学 / 増殖因子 / ゲル / 脱細胞化臓器 / 血管網 / 多孔質担体 / ヘパリン |
Research Abstract |
細胞を包埋した増殖因子固定化ヒドロゲル充填スキャホールド培養系を用いた実用的な肝組織工学技術の開発を目指している。平成24年度は以下の成果を得た。 哺乳類肝臓由来のトランスグルタミナーゼ(tTGase)の基質配列を有する塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF-tag)を開発した。得られたbFGF-tagはtTGase特異的にコラーゲンフィルムに固定化され、ヒト臍帯静脈内皮細胞の増殖を促進した。一方、脱細胞化肝臓の可溶化による新規機能性培養基材を取得した。本基材は肝細胞増殖因子(HGF)や血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を高効率に固定化でき、培養肝細胞の各種肝特異的機能発現や血管内皮細胞の増殖を促進した。 成熟ラット肝細胞包埋ヒドロゲルを70%部分肝切除ラットに皮下移植することにより、移植肝細胞の生着率は向上するものの、細胞増殖は確認できなかった。しかしながら、ラット胎仔肝臓細胞包埋ヒドロゲルを用いることにより、細胞増殖を伴う肝組織構築に有効であることを明らかにした。 内皮化された脱細胞化スキャホールドに経門脈的に新鮮ラット血液を注入し、樹状血管網構造の確認ならびに血液漏洩防止を指標とした再構築血管網の機能性を示した。さらに、当該スキャホールドへの肝細胞播種方法を検討した結果、門脈や下大静脈を用いた細胞播種方法では血管内が細胞で詰まってしまった。しかしながら、針付きシリンジ用いてスキャホールド外部から細胞懸濁コラーゲンゾルを注入することによりこの問題点を克服でき、良好なアルブミン合成活性を示すことができた。一方、独自に開発した肝不全ラットモデルに対する極小型の血液体外循環システムを構築した。これに対して脱細胞化肝臓を接続し、血液循環することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書記載の内容をおおむね順調に遂行できている。ただし、平成23年度に引き続き、タグ付き増殖因子の開発は当初計画の80%、細胞源に対する検討は当初計画の50%と遅延気味である。しかしながら、当初予定になかった脱細胞化肝臓の可溶化基材開発とそれを用いたゲル形成による移植肝細胞の組織形成の向上効果を見出している。また、臓器鋳型としての脱細胞化肝臓取得と3D-CTによる鋳型品質の定量評価ならびに鋳型の再細胞化に成功しており、計画以上の成果を得ていることから、全体として上記自己評価に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
下記項目の実施により当初の目標を達成する。 (1)タグ付き各種増殖因子の開発を完了し、本研究課題に対する有効性を実証する。 (2)内皮化された脱細胞化肝臓による肝臓再構築を実現し、その有効性をin vitroならびにex vivoにて実証する。 (3)ラット胎児肝臓由来細胞を用いて機能性肝組織再構築を行う。 (4)上記構造体をラットへ移植し、実用的肝組織工学構築技術としての有効性を実証する。
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