Research Abstract |
今年度研究実施計画に沿って,H23年度は,まず極短時間真空紫外分光による真空紫外スペクトルの計測において,独自の絶対強度校正システムを開発することにより,真空紫外領域から近赤外領域まで,広範囲にわたって放射スペクトルの絶対強度を決定することが可能な実験システムを構築した.これを用いて,様々な波長領域,化学種からの発光の絶対強度スペクトルを取得し,輻射解析コードSPRADIAN2を融合したcomputer aided molecular spectroscopy(CAMS)法により,分子の回転,振動温度および電子励起状態を決定した.絶対強度を計測することにより,原理的にはCO,C2,CNなどの活性種の数密度に関わる情報がえられることとなり,H22年度よりも定量性の高いデータが得られるようになったことになる.今後は,得られた熱化学データを用いて,熱化学モデルと輻射モデルの検証と改善を行う予定である. 並行して進めた数値解析技術の改善作業においては,流体解析コードJONATHANを火星飛行環境用に改善を行いと同時に,輻射解析コードSPRADIAN2にCOの赤外放射など新しいモデルを導入することで,より現実的なスペクトルの予測が可能となった.現在,流体解析コードと輻射解析コードにより実験結果を再現する試みがなされており,ほぼ計画通りの成果が得られている. 課題として,H22年度より取り組んできた原子共鳴吸収分光法について,極短時間現象ではS/N比の低下などにより,必要な精度のデータを獲得することが未だできていない.これにより,原子密度の直接計測が困難となっており,今後計測装置の改修や,真空紫外吸収分光法に一本化した密度計測に計画を修正するなど,適切なタイミングで判断を行いたい.量子解析によるCO-O系の相互作用ポテンシャル面の作成については,精度向上の点で課題があるものの,ほぼ計画通りの成果が上げられており,最終年度の目標である,実験と解析を融合して総合的に熱化学現象をモデル化・検証するための準備はほぼ完了している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子共鳴吸収分光で,当初目的としていた精度で結果を得ることができないなどの課題はあるものの,代替手段として真空紫外吸収分光によって原子の数密度を直接計測できるなど,当初計画していたデータは取得できる見込みが立っており,最終年度の目標である総合的な熱化学現象のモデル化・検証するための準備はほぼ完了しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
分子共鳴吸収分光で当初期待していた成果を達成できる見込みが乏しいが,代替手段として真空紫外吸収分光を用いることで原子の数密度を直接計測し,温度と密度の必要なデータセットを獲得することへ計画を修正する.一方,ここ数年で研究成果の需要が,超高速大気突入の飛行環境予測よりも,低速大気突入の環境をより高い精度で予測することへシフトしつつあるため,宇宙機の背面輻射加熱の予測精度の向上など,従来は目標としていない分野についても研究を拡大する.
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