2011 Fiscal Year Annual Research Report
海の深層冷熱を利用する取排水のない発電所の冷却水システムに関する研究
Project/Area Number |
22360364
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
尾崎 雅彦 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (30529706)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 徹 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (30282677)
多部田 茂 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 准教授 (40262406)
大内 一之 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (40533972)
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Keywords | 深層水 / 発電所取排水 / 抵抗低減剤 / ファウリング / 肥沃化 |
Research Abstract |
本研究では、発電所構内の復水器と深度数百メートルの海洋深層との間を循環型の大径配管で結び、深層の冷熱を用いて復水器での蒸気冷却を行うことによって、温排水がなく、発電効率が年間を通じて安定化・向上する新形式の冷却水システムを提案している。その技術的・経済的成立性を明らかにするために、本年度は総合評価に必要な手法の構築・データの取得を行った。主な成果は以下のとおりである。 1.管内摩擦損失計測用温度制御型回流実験装置(測定区画の長さ2.8m・内径50mmまたは100mm、最大流速3m/秒(内径100mmの場合)、設定温度;室温~70℃)を製作し、冷却用水への抵抗低減剤添加による管摩擦損失低減効果と温度影響・抵抗低減剤の種類や濃度影響を実験的に評価した。 2.一般に光が届かずかつ低温の海洋深層では生物活動が希薄で生物付着などは少ないと考えられているが、そこへ熱が持ち込まれた場合の知見は乏しい。そこで研究代表者らの所属機関が伊豆大島に保有する深層水取水設備を利用して定期的に実際の深層水を入手し、暗室内で低温に制御した深層水中にチタン細管を配して高温水を30日間連続して流し、管表面の付着物の観察・分析、伝熱性能変化の計測などを行った。40℃以上の高温部では海洋性バクテリアによるバイオフィルムが付着・成長し伝熱性能が低下したが、本システムで想定している程度の温度範囲ではほとんど変化が無いことが薙認された。 3.深層へ熱入力があった場合の物理-生態系結合モデルを構築し、仮想的な海域における栄養塩動態のシミュレーションを行うことにより、深層での熱交換による湧昇を利用した海域肥沃化効果の試計算を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
循環型冷却水システムの冷却用水への抵抗低減剤添加による効果が定量的に評価可能になり、深層の低温利用による発電効率向上が管内摩擦損失や熱交換器内の損失を上回ることをケーススタディ計算で確認した。また海底に設置する熱交換器への付着物(ファウリング)についてはバクテリアによるバイオフィルム付着の可能性が実験的に確認されたが、想定温度内ではほとんど影響がないと判断された。さらに、深層への熱入力にともなう周囲の流場変化予測と湧昇に伴う栄養塩の挙動検討を行うための数値モデルを構築し、入熱の有効利用による肥沃化効果検討の準備ができた。以上、研究計画に沿ってほぼ順調に成果が上がっている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は研究計画の最終年度にあたる。当初予定どおり、新システムのプロトモデルを構築し性能面・経済面での総合評価を行う。 具体的には、まず海底設置型熱交換装置の性能評価手法の開発を行い、所要の性能を発揮するための基本計画を行う。またこれまでに得られた知見や開発された手法を用いて海底配管の基本計画を行う。これらによって新形式冷却水システムを採用した場合のプロトモデルを構築し、全体としての効率向上・費用を評価する。また深層への熱入力を有効利用した肥沃化効果の可能性を提示する。
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Research Products
(1 results)