2012 Fiscal Year Annual Research Report
エゾヤチネズミ個体群の遺伝的空間構造形成に関わる個体数変動と分散行動の効果
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22370006
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齊藤 隆 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (00183814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸田 治 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 助教 (00545626)
石橋 靖幸 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, 主任研究員 (80353580)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 生態学 / 動物 / 遺伝学 |
Research Abstract |
(a) 個体群の周期変動と遺伝的距離の関係:石狩湾沿いと根室市に設置した8調査プロット(0.5 ha)で,エゾヤチネズミの標識―再捕獲調査を実施した.プロット間の距離は50 - 2000 mで,さまざま距離間隔で個体群間の遺伝的距離と地理的な距離の関係,個体の分散行動を分析することができる.捕獲個体数は石狩で約300頭、根室で約500頭に達し,現在DNAを分析している. (b) 石狩湾個体群の解析:これまでの分析の結果,雌雄で集団構造に大きな違いがあることが分かった.メスの集団は500 m までは相互に遺伝的距離が近く,類似性の高い個体群が見られたが,1.5 km 以上離れると遺伝的に類似していると見なされる集団は見られなくなった.一方,オスには個体群間の地理的距離と遺伝的な距離に明瞭な関係は認められず,地理的距離にかかわらず個体群相互に遺伝的な交流がある適度保たれていた.これは,オスは良く分散するがメスは出生地に止まるという行動の雌雄差によって説明できる.この結果を研究論文にまとめ,学術雑誌(Journal of Heredity)に投稿した.現在,受理に向けて最終改訂を行っている. (c) 大きなスケールの個体群構造解析:エゾヤチネズミと近縁のムクゲネズミの地理系統学的な分析を全道レベルで行った.エゾヤチネズミの個体群は相互に遺伝的に分化していたものの,地理的には明確な構造を示さなかった.一方,ムクゲネズミ個体群は地理系統学的構造を示し,道南,道央,道北で異なった歴史を持っていた.この結果は近縁種であっても大陸から北海道に移入した時期が異なっていることを意味している.エゾヤチネズミは最終氷期にムクゲネズミはそれ以前に北海道に渡来したものと考えられた.この結果を研究論文にまとめ,学術雑誌(Zoological Science)に投稿し,受理された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外調査は極めて順調に進んでおり,期待以上のサンプルが収集できている.一方,DNA分析は,期待以上のサンプル数のために分析速度が十分ではなく,根室市で採集したサンプルの分析が遅れ気味である.論文の取りまとめは軌道に乗り始めた.ムクゲネズミとの比較研究論文は受理され,エゾヤチネズミの集団構造の雌雄差に関する論文は,受理間近である.また,個体数変動に関する論文も投稿した.
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Strategy for Future Research Activity |
順調な野外調査を継続する一方,滞り気味のDNA分析に努力を集中させる.また,研究成果の発表に一層の力を入れ,国際学会での発表,論文の執筆に前年度以上に取り組む.
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Research Products
(4 results)