2011 Fiscal Year Annual Research Report
茎形成を統御する細胞壁遺伝子群の転写制御システムの解明
Project/Area Number |
22370013
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西谷 和彦 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (60164555)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横山 隆亮 東北大学, 生命科学研究科, 講師 (90302083)
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Keywords | 植物 / 茎成長 / 支持組織 / 細胞壁 / 転写制御 / PME / JIM7 |
Research Abstract |
維管束植物の茎形成は発生プログラムと環境シグナルによる制御を受けながら、最終的には細胞壁の構築・再編過程を通して,「細胞伸長」と「組織支持」の機能を最適化する形で進むことが経験的に知られている。これらの過程で,細胞壁関連遺伝子ファミリーであるXTHやPMEファミリーが中心的な役割を担うことを私たちは明らかにしてきたが,ファミリー内の個々のメンバーの役割の多くは未解明であった。そこで、本研究では,①シロイヌナズナとイネ、それぞれのXTH とPMEファミリーの中で、茎の特定組織における細胞伸長と組織支持の分子過程に関わるメンバーを特定すること、②それらのメンバーによる細胞壁変化の実体を解明すること、③伸長と支持の両機能の統御に関わる制御因子を明らかにすること、を主要な目標にしてH22年に研究を開始した。昨年までの研究により、シロイヌナズナのPME61のT-DNAタグラインの表現型の解析を進めた。また、イネにおいてはOsXTH19がキシログルカンを基質として、細胞伸長に関与することを示す証拠を得た。 今年度はPME61に焦点を当て、JIM5, JIM7, LM20など,ホモガラクツロナン上のメチル基の修飾の程度の違いを識別できるモノクローナル抗体による間接蛍光法や免疫電子顕微鏡法により、PME61がシロイヌナズナ花茎基部の皮層および維管束間繊維の一次壁および中葉に特異的に局在するホモガラクツロナンのメチルエステル基の加水分解を特異的に触媒すること、この酵素を欠損すると、皮層の細胞壁形態に異常を生じることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、茎形成における細胞壁の役割の解明をめざし次の三つの目標を掲げて研究を進めている。 ①シロイヌナズナとイネ、それぞれのXTH とPMEファミリーの中で、茎の特定組織における細胞伸長と組織支持の分子過程に関わるメンバーを特定する。②それらのメンバーによる細胞壁変化の実体を解明する。 ③伸長と支持の両機能の統御に関わる制御因子を明らかにする。 本年度までの研究により、①については、シロイヌナズナのPME61のT-DNAタグラインの表現型の解析を進め、組織支持に関わること、イネにおいてはOsXTH19が茎伸長に関わることを明らかにし、①の目標はほぼ達成できた。 ②の目標については、PME61がシロイヌナズナの皮層などの一次壁のペクチンのメチル化に関わること、OsXTH19がキシログルカンを基質として、細胞伸長に関与することを示し、目標の一部を達成したが、尚、細胞壁の構造変化の詳細は未解明である。 ③の目標については次年度研究を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の三つの目標の内、目標①シロイヌナズナとイネ、それぞれのXTH とPMEファミリーの中で、茎の特定組織における細胞伸長と組織支持の分子過程に関わるメンバーの特定に関しては、目標①はほぼ達成されたが、目標②のメンバーによる細胞壁変化の実体解明については、PME61の酵素の分子機能や、PME61の欠損による細胞壁の分子構造の異常についてが未解明である。次年度は、PME61酵素の分子機能を酵素化学的に解明すると同時に, PME61欠損変異体内の細胞壁中のペクチン以外の構造、特に二次細胞壁の構造を解析し、PME61欠損による花茎の力学強度の低下が、PME61の欠損によるペクチンのメチル化度の変化にのみ起因するか否かを検証する。 目標③の伸長と支持の両機能の統御に関わる制御因子の解明については、T-DNA挿入変異体のホモラインライブラリーのスクリーニングの方法を用いて進める。
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