2010 Fiscal Year Annual Research Report
植物細胞の脱分化過程における増殖能再獲得の分子機構
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22370015
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杉山 宗隆 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (50202130)
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Keywords | 温度感受性突然変異体 / 細胞増殖能 / シロイヌナズナ / 脱分化 / ブロモデオキシウリジン / rRNA / snRNA |
Research Abstract |
シロイヌナズナの突然変異体srd2、rid1、rid2は、いずれも脱分化に伴う細胞増殖能の獲得に関し、強い温度感受性を示す。また、この増殖能の獲得は、チミジン類似体のブロモデオキシウリジン(BrdU)による選択的な阻害を受ける。そこで、srd2、rid1、rid2とrid2抑圧変異体sriw1、BrdU耐性変異体bro1を用いて、脱分化過程で細胞増殖能が再獲得される機構を解析した。 rid2はプレrRNAプロセッシングに欠陥をもつが、新たに80Sリボソーム量が減少していることが判明した。rRNA生合成の指標として、RNAポリメラーゼIのレポーターの発現を調べたところ、分裂組織や器官原基のほか、細胞増殖能が高いとされる根の中心柱で高かった。胚軸中心柱での発現は低かったが、カルス形成を誘導すると、細胞増殖性化に先立って上昇した。これはRID2の発現パターンとも一致し、rRNAの生合成が増殖能の制限要因の一つであることが示唆された。 sriw1変異のrid2抑圧能がNAC転写因子ANAC082の機能欠損に起因することを突き止めた。sriw1変異の導入により、snRNA転写活性化因子に変異をもつsrd2やプレmRNAスプライシング関連の変異をもつrid1でも、カルス形成の温度感受性が軽減された。これらより、ANAC082が関与する機構がsnRNA/スプライソソームおよびrRNA/リボソームの過不足を感知して細胞増殖を負に制御しており、この機構の存在が細胞増殖能を規定している、と推定した。 bro1がRNA結合タンパク質UBA1aの遺伝子にBrdU耐性の原因と思われる変異をもつことなどから、BrdUの作用とRNAとの関係に注目して、BrdUがRNAに取り込まれる可能性について検討した。その結果、カルス誘導時にBrdUを投与すると、かなりの割合がRNAに取り込まれることがわかった。
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