2011 Fiscal Year Annual Research Report
特異なシアノバクテリアを用いて光合成の基本問題-光化学反応と場-を解く
Project/Area Number |
22370017
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土屋 徹 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 准教授 (20362569)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋本 誠志 神戸大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40250477)
鞆 達也 東京理科大学, 理学部, 准教授 (60300886)
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Keywords | 光誘起電子移動反応 / 酸化還元電位 / チラコイド膜形成 / 超高速分光 / バイオインフォーマティックス |
Research Abstract |
クロロフィル(Chl)dを用いて光合成反応を行うAcaryochloris marinaより精製した光化学系II(PS II)標品について、その第二電子受容体であるプラストキノン(QA)の酸化還元電位を測定し、Chl aを用いるSynechocystisのQAの電位と比較した。その結果、A. marinaのQAの電位はSynechocystisのQAの電位と比較して高くなっていることが判明した。同様の電位の正へのシフトは、昨年度報告した第一電子受容体であるフェオフィチンaの電位の比較でもみられたことから、クロロフィルaを利用するSynechocystisより低いエネルギーで駆動するA. marinaのPS IIではQAの電位がフェオフィチンaの電位と協調してシフトしていることが判明した。これらの結果は、生物が異なるクロロフィルを利用する際にどのようなチューニングを施しているのかを明瞭に示している。 解析をさらに進めるためには、精製度の高い標品を大量に得ることが必要である。PS IIのサブユニットの一つであるPsbBのC-末端側にヒスチジンタグを導入することができれば、アフィニティークロマトグラフィーにより複合体を簡便かつ高効率できるため、A. marinaでの遺伝子ターゲッティング系の開発が求められた。そこで、当該生物での形質転換系を確立するために、接合法によるA. marinaへの保持型プラスミドの導入を試みた。その結果、プラスミド(発現ベクター)を保持した形質転換体を得ることに成功した。本成果は、A. marinaを標的とした分子遺伝学的解析を可能とするための大きなブレイクスルーであり、上記の目的のためには避けては通れない大きな壁を超えたことを意味する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、A. marinaのPS IIの電子伝達成分であるあるフェオフィチンaとQAの酸化還元電位の測定を行い、PS IIの水分解系におけるエネルギー論の基本原理を解明した。これらの成果は高く評価され、米国科学アカデミー紀要に2報の論文として掲載された。 加えて、世界に先駆けてA. marinaの形質転換に成功するなど、今後の発展についてさらなる期待がもてる。 以上の結果を鑑みて、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までにA. marinaより精製したPS IIの酸化還元電位の測定によるエネルギー論の研究について一定の成果が得られた。さらに研究を推進するためには本生物の分子遺伝学的解析が必須であるが、その目的に必要である形質転換系の開発にも既に成功した。よって、今後はこれまでの生化学的・分光学的解析に加えて、分子遺伝学的解析のために必要な実験系の開発もさらに進めてゆく予定である。また、現時点で発現ベクターの導入によるA. marina内での外来遺伝子の発現が可能となったので。本生物の光合成系を改変する試みも併せて行う予定である。
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Research Products
(27 results)
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[Journal Article] Alterations in photosynthetic pigments and amino acid composition of D1 protein change energy distribution in photosystem II2012
Author(s)
Yokono, M., Tomo, T., Nagao, R., Ito, H., Tanaka, A., Akimoto, S
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Journal Title
Biochim. Biophys. Acta
Volume: 1817
Pages: 754-759
DOI
Peer Reviewed
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