Research Abstract |
シロイヌナズナの茎の伸長に著しい欠損を示す矮性変異株acl5の原因遺伝子は,サーモスペルミン合成酵素をコードする。本研究では,サーモスペルミンがどのように茎の伸長を制御しているのか,その作用機構の解明を目指す。具体的にはacl5変異株を出発材料に,その表現型が回復したサプレッサー変異株sac51の解析から明らかになりつつある,SAC51遺伝子の翻訳調飾におけるサーモスペルミンの作用,acl5変異株において外的なサーモスペルミンに応答する遺伝子の同定,コケ植物におけるACL5相同遺伝子の機能に関する研究をそれぞれすすめた。今年度の主要な結果は以下のとおりである。 1)acl5に対するサプレッサー変異株の分子遺伝学的解析 新たに単離したacl5変異に対するサプレッサー変異株sac57,59,501,503,504について,遺伝解析をすすめ,次世代シーケンサーによるゲノム配列の解読を行った結果,原因遺伝子の候補を絞り込むことができた。 2)植物界におけるサーモスペルミンの分布 裸子植物(イチョウ),シダ植物(オシダ)に加え,緑藻(クラミドモナス),褐藻(ヒジキ),紅藻(シアニジウム),卵菌(ジャガイモ疫病菌)について,HPLCによるポリアミン分析を行い,それぞれからサーモスペルミンが検出されることを明らかにした。 3)コケACL5相同遺伝子の解析 ヒメツリガネゴケにある3つのACL5相同遺伝子ACL5A,B,Cについて,相同組換えによる各遺伝子の破壊株の作成を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
acl5に対するサプレッサー変異株の分子遺伝学的解析について,次世代シーケンサーによるゲノム解読が予定したとおり進み,原因遺伝子の候補が絞られつつあることから,順調な進展と判断した。サーモスペルミンとオーキシンの相反作用に関する論文,サーモスペルミンの植物界における分布,その機能と作用機構に関する総説も公表でき,成果発表も滞りなく行えた,
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