2012 Fiscal Year Annual Research Report
植物の茎伸長過程におけるサーモスペルミンの作用機構の解明
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22370021
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高橋 卓 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (20271710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本瀬 宏康 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (70342863)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | シロイヌナズナ / ポリアミン / 翻訳制御 |
Research Abstract |
シロイヌナズナのacl5変異株は,維管束木部の異常な増殖により茎の伸長が著しく阻害された矮性の表現型を示し,その原因遺伝子ACL5はスペルミンの構造異性体であるサーモスペルミンの合成酵素をコードしている。本研究では,木部分化の抑制におけるサーモスペルミンの作用機構を明らかにするため,acl5変異株の茎の伸長が回復したサプレッサー変異株sacを単離し,これまでに,各sac変異の原因遺伝子として,SAC51はbHLH型の転写因子,SAC52はリボソームタンパク質L10A,SAC53はリボソーム構成要素RACK1A,SAC56はリボソームタンパク質L4Aをそれぞれコードし,これらの変異がSAC51の翻訳を促進して木部の過剰な分化を抑えていることを解明した。 本年度は,未だ原因遺伝子が特定されていないsac55, 57, 59, 501~504について,染色体のマッピングと高速シーケンサにより原因遺伝子の同定,解析をすすめた。その結果,sac57変異の原因遺伝子は,SAC51と相同性の高いbHLH型転写因子をコードするSACL3と推定され,sac51変異同様,mRNAの5’領域に保存された短いペプチドコード配列(uORF)に塩基置換が見つかった。また、sac501変異はsac52と同じリボソームタンパク質L10Aの別の変異アレルと推定された。sac変異の原因遺伝子にリボソームタンパク質やuORFが見つかることから,サーモスペルミンが植物の茎の伸長に関わる遺伝子の翻訳制御に重要な役割をもっていることが示唆された。 さらに,sac55, sac59変異についても,それぞれ特定の遺伝子に塩基置換を見つけることができた。サーモスペルミンによる茎の伸長制御機構の解明の重要な手がかりになると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シーケンサーの利用により,茎伸長の回復変異の原因遺伝子の同定作業がはかどり,今後の研究展開につながる重要な手がかりが得られたと判断されるため。
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Strategy for Future Research Activity |
原因遺伝子が特定されつつある突然変異については,相補実験および各遺伝子の発現や機能の解析をすすめる。 サーモスペルミンの作用機構の解析については,試験管内無細胞タンパク質合成系や植物以外の細胞を用いた系で,翻訳促進作用の再現を検証する。
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